第30話

「こんなところにあなたたちが来るとはね。ようこそ?とでも行っておいた方が良いかな?」

 

 僕は実に軽やかな口調で話しかける。


「「ッ!?!?」」


 それに対して強く反応する二人。

 エルフの里を見ることの出来るとある山頂。

 そこに二人の魔族がいた。

 一人は穏健派の代表である魔王、そしてもう一人は過激派の代表である軍団長の一人。


「何者だッ!!!」


 分厚い筋肉に覆われた魔族の男、軍団長が叫んで、自らの獲物を僕の方へと向けてくる。 


「え?見てわからない?普通に人間だよ?僕は」

 

 二人の前で僕はくるりと一回転して見せる。何だったら一回転だけでなく……もっと多くの回転を。

 二回転、三回転、四回転、五回転。

 僕はくるくると回って見せる。


「……何をやっているのよ……」

 

 そんな僕を見てもうひとり、魔族の女性、魔王が呆れたような声を上げる。

 褐色の肌に、抜群のスタイル。

 頭から生える巨大な角、背中から生える巨大な翼。

 きれいな銀髪を持った女性は呆れながら……それでも強い眼光を持って僕のことを睨みつける。

 

「それで?……あなたが人間なのはわかったわ。問題なのは何故あなたがここに居るのかよ」


「え?そんなこと聞くまでのことじゃないよね?……普通に魔王と魔族の軍団長が来ていればその監視にくらい来るでしょう?」


「違うッ!!!この場には覆うように結界が貼ってあったはずだッ!!!あれはどうしたッ!!!」


「ァ?あのペラペラの紙のこと?あんなのものすぐに通り抜けたよ……対した労力じゃない」


「馬鹿なッ!あれを人間ごときに破れるはずがッ……!」

 

 僕の答えに対して魔族の軍団長は驚愕し、体を震わせる。


「なるほど……人間の力が私たちの想像を上回っていた。ただそれだけのことね。それで?だからと言って私たち二人の前にたった一人で姿を見せるなんて……馬鹿なのかしら?」

 

「くくく」

 

 僕は魔王の言葉に対して笑い声を上げる。


「自分の足元にも及ばないようなそんな二人に……複数人を引き連れて会いに来たりなんかしないよ」

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