第29話

「……あなたたち……少々慌て過ぎよ。気持ちはわかるけどね」

 

 紛糾する会議。

 怒号の飛び交い……困惑する声が広がり、統制の取れていないエルフたちの会議に……マルジェリアの静かな声が響き渡る。

 この会議の場にハイエルフであるマルジェリアがやってきたのである。


「ッ!?ハイエルフ様ッ!!!!」

 

 それに驚き、エルフたちが一斉に跪き、頭を垂れる。


「私に対してそんな反応をする必要はないわよ。……私はちょっと外れている存在だから」

 

 マルジェリアが自嘲するように告げる。

 ……ハイエルフとしてエルフの里を飛びだし、マルジェリアが歩んできた人生は決して楽な道のりではなく、彼女を絶望させるのには十分だった。

 マルジェリアは既に諦めている。彼女はただの……生きる屍である。


「私のことなんてどうでもいいわ……問題なのはここが襲撃される……ということよ。気にしないきゃいけないのはそこなの。私じゃないわ。……魔族。彼らについて少しばかり説明をさせてもらおうかしら……長い時を影に隠れている魔族たちの生態をあなたちは知らないだろうしね」


 マルジェリアがエルフたちの前に立ち、紛糾し、混乱している会議をまとめあげだした頃……僕はちょっとだけ予想外の存在を感知する。

 ……本当に予想外だな。なんでこいつらがこの場に居るのだろうか?


「ちょっとだけ遊びに行ってくるわ」

 

 僕は立ち上がり、隣に座っているミリアに告げる。

 

「はい……?どこにでしょうか?」


「いやいや。少し面白そうな相手を見つけてねぇ……」


「なるほど……そういうことでしたか。それではいってらっしゃいませ」


「あぁ……ちょっと遊んでくるよ」

 

 僕は転移魔法を発動し……少し遠くの場所にまで赴いた。

 まさかあの人たち……魔王たちが来ているとは……ゲームでも実は来ていたりするのだろうか……?

 ふふふ……一体どうなるのだろうか?

 ゲーム上のエルピスは魔王様に恋していたらしいけど……現実ではどうなるのだろうか?

 ちょっとだけ楽しみだ。

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