第48話
「ふわぁ」
僕はあくびを浮かべながらアレリーナを呼びに、きっといるであろう訓練場へと向かっていた。
ミリアが『私が呼びに行きます』と言ってくれたのだが、僕が動きたかったのでわざわざ自分の足で向かっている。
「ここ、か?」
僕は弓士専用の訓練場に顔を出す。
「おっ。見っけ」
一番入り口から離れたところにいたアレリーナを見つけ、彼女の元へと僕は転移する。
「やぁ」
「……ッ!?」
いきなり真後ろに立った僕を見てアレリーナは驚愕の表情を浮かべる。
「び、びっくりした」
「そうか。生徒会長が呼んでいる。さっさと来ると良い」
「わ、わかった」
アレリーナは僕の言葉に頷く。
「……訓練か?」
僕はアレリーナがやっていた訓練の方へと視線を向ける。
「うむ」
アレリーナは僕の言葉に頷く。
彼女はゲームでも特殊なロールを得意としていた。
遠距離から火力を出す弓士なのにも関わらず、遠距離魔法領域にあまり才能がない、という悲しい子なのだ。
その代わりに弱体化魔法領域などが得意で、遠距離から弱体化魔法や状態異常を付与して戦う珍しいタイプなのだ。
「……アレリーナってば遠距離魔法領域苦手だよね?」
「……う、うむ」
アレリーナは目を泳がせながら頷く。
本人も自覚はあるのだろう。
「アレリーナさ。弱体化魔法領域とかも試してみれば?シナジーはあると思うんだんけど」
「何……?」
アレリーナは首を傾げて僕の方を見てくる。
「遠距離から弱体化魔法かけて相手のステータスを下げて、毒を付与する魔法で相手を殺す。結構うざくて強そうじゃないか?確か自然魔法に相手に幻惑を見せたり、蔓を使って相手の動きを止めたりする魔法とかもあったよね?」
「うむ。そうだな……なるほど、弱体化魔法と毒か。妾に弱体化魔法領域の才能があるだろうか?」
「さぁ?だが、必ず一つは得意な魔法があるはずだよ。そういうふうに人間は出来ているからな。弱体化魔法領域が無理なら、中近距離魔法を極めて至近距離から大量に弓を放って殺したりとかもできそうじゃないか?」
「……なるほど」
「自分が苦手だと理解している魔法術式領域に固執し、訓練するのは愚策も愚策だぞ?」
「うむ。確かにそうだな!ありがたい……それでは今から」
「は?駄目だが?呼んでいると言っているだろう?生徒会長が」
「あぁ、そうだった。すまない。高ぶってしまっていた。今すぐに行こう」
僕はアレリーナを連れて、生徒会室へと戻った。
……よし。これでアレリーナは強くなるし、主人公との恋愛フラグも折れただろう。
アレリーナの主人公との恋愛フラグは、強くなれずに苦心しているアレリーナに主人公が手を貸すという内容だったから。
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