第14話

「ふぇー」

 

 ミリアが気の抜けたなんとも情けない声を上げる。


「駄目ですか……」


「まぁ、無理だな」


「身体能力は同じのはず……なのにどうしてでしょう」


「長年の経験に基づいた感だよ」

 

 今、僕とミリアは訓練の一環として模擬戦をしていたのだ。

 ミリアは全力。

 僕は魔法禁止、身体能力はミリアレベルに制限、道具はナイフ一本という縛りで。

 

「……経験……ですか」


「そうだな。……まぁ、焦る必要はないな。僕に追いつこうと考えても無駄だからな。……殺し合いなら僕はマルジェリアにも勝てるからな」


「へぇー。言うじゃない」

 

 僕とミリアの会話を聞いていたマルジェリアが僕の言葉を聞いて口元を歪める。


「私に……殺し合いなら勝てると?」


「言っておくか、殺し合いが一日で終わると思うなよ?僕は一ヶ月飲まず食わずで、ずっと徹夜していてもパフォーマンスは落ちないよ?……お前は?」


「……辞めておくわ」

 

 マルジェリアが笑顔を引き攣らせる。

 ……魔法があるとしても、普通に化け物だよな。信じられないレベルだ。


「……格が違いますね……何もかもが」


「まぁ、当然だろ。僕はガキの頃から、赤ん坊の頃からずっと暗殺者として育てられているのだから」


「……赤ん坊の頃、ですか?」

 

 僕の言葉を聞いてミリアは首を傾げる。


「あぁ。アレイスター家だと生まれてきた赤ん坊に魔力を流しこんで育てるんだよ」


「うげぇ!?」

 

「……?」

 

 僕の言葉を聞いてマルジェリアは変な声を上げ、ミリアは首を傾げる。


「……なんて、ことを……狂っているわ」

 

 マルジェリアはなんとも言えない表情を浮かべている。


「どういうことでしょうか?」


「あぁ……魔力の使い方ってのは物心付く前からちょっとずつ覚えていくんだよ。どういう原理かはわからないが、人間は自分の扱える魔力に応じて体内の魔力が増えていくのだよ」


 僕はミリアに説明していく。


「……それで、だ。過剰魔力暴走っていう現象があって、自分の扱える魔力以上の魔力が体内に入ってきてしまった時、魔力は暴走し、体に激痛を走らせる。これを過剰魔力暴走と言う。あまりの痛みに過剰魔力暴走になった人間は全員自殺してしまうんだ」


「そ、そんな現象が……」


「それで、アレイスター家は赤ん坊の体に魔力を流し込み、魔力暴走を引き起こすんだ。それで無理やり魔力操作を覚えさせて、体内の保有魔力量を増やすんだよ」


「おえ……」


「……きょ、狂人」

 

 ミリアの小さな呟き。 


「そうだよ」

 

 僕はそれに笑顔で頷いた。

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