第36話

 私の目の前に二人と現れたエルピス様。

 エルピス様はこの場で格の違う……圧倒的な力を見せつける。


「……弱いな」

 

 魔族たちを全員一撃で倒していく。

 空間魔法を使って容易く一人ずつ殺していく。

 本人は一気に大量に殺せず魔法を使えないから、集団戦闘が苦手と語っているが、そんなの嘘でしか無いだろう。

 人間を、エルフを、魔族を、様々な種族の生命体を一人殺すのに、かかる時間は1秒ほど。

 一秒で一人。一分で60人。一時間で3600人。

 それだけの数を一人で倒せれば十分だろう。


「愚か者」


「あたっ」

 

 辺り一帯の魔族を全滅し終えたエルピス様が私の頭に手刀を落としてくる。

 大した痛みはない。

 それでも、それは私に衝撃を与え、体を震わせる。


「僕が教えた暗殺者の心得……戦い方は一体どこに行ってしまったの?僕は悲しいよ。本当に」

 

 心底呆れたように告げられるエルピス様の言葉。

 だが、私はしっかりとその言葉の裏に隠された底しれない優しさを感じることができる。


「ふー。後は僕がやるから任せてくれていいよ?」

 

 エルピス様は雑に私の頭を撫でて、魔族の方へと向かっていく。


「おーい。何を遊んでいるんだ?ちゃんと真面目にやれよ。何で未だに誰も殺せていないの?舐めているの?」

 

「あら?殺しちゃって良いのね……」


「なんで殺しちゃいけないと思った?」


「いや……なんか君が魔族の二人と楽しそうに話しているから……ここで無双していたら怒られるかなって……」


「別にそんなこと気にしやしねぇよ……駄目なら始めの方に言ってる。……というか、バッチリと見えているのな。あいつ……ちゃんと結界貼っていたよね?本当にペラペラの紙同然だったじゃん。驚愕だよ」


「……え?結界なんてあったのか?」


「本当にダメダメじゃん……まぁ、良いや。さっさと叩きのめしちゃうよ」


「えぇ。わかったわ」


 エルピス様とマルジェリアが魔族たちに牙を剥く。

 殺すために放たれる技の数々が魔族たちの命を奪い、どんどん数を削っていった……。

 

 

 

 なんで?私を? 

 

 

 

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