第14話

 僕は長い時間を掛けてアレイスター家の領地の方まで戻ってくる。

 ……クソ。なんで僕は短距離転移魔法しか使えないんだ……長距離転移魔法を使わせろ……。

 そんなことを考えながら質素なアレイスター家の屋敷の中へと入り……そして、広すぎる地下の方へと転移する。

 地下には様々な施設が存在している。

 トレーニング施設から、プール、武器庫、宝物庫、食料庫、拷問部屋、地下牢……などなど。

 施設のバリエーションの多さには自信がある。

 

 そんな中、僕の目指す場所は書庫である。

 僕は転移魔法を発動し、書庫の前へと行く。

 

「よっこいしょ」

 

 厳重な扉。

 それに僕は触れ、ゆっくりとその扉を開ける。

 まず僕を阻むのは空間の断裂。

 空間が歪んでいるせいで書庫の中へと入れない。


「ほい」

 

 空間魔法でその断裂を無効化して書庫の中へと入っていく。

 書庫の中の時間は止められている。結構大掛かりで発動に長い時間と特殊な道具を必要とする第十二階位魔法である『ノータイム』による効果だ。

 ノータイムの効果で時が止まっているため、自分の時は自分で進めないといけない。


「えぇっと……」

 

 僕は自分の時を進めながら歩いていく。


 アレイスター家が魔法で厳重なセキュリティーを作っているこの場所。

 ここに置かれているのはアレイスター家のすべてだ。

 長い時をかけて集められたこの世界の情報がここには集められている。

 神話、伝説世界での存在でしかない第十二階位の魔法の詳細について書かれた本もある。

 この場所では計26個の第十二階位魔法が修められている。ちなみにこの26個中8個は僕が作ったものである。

 

「薬草は……」

 

 僕は巨大な書庫の中を自分の記憶を頼りに進んでいく。


「あった」

 

 そして、様々な薬草について書かれた本を見つける。

 分類は特殊な薬草……これかな?

 僕は一つの本を手に取る。


「ふむふむ」

 

 あぁ……そうかそうか。

 魔界にたくさん生えている群生地があるんだったな。

 忘れた。忘れていた。

 

「よいしょ」

 

 僕は本を元の場所に戻して引き返す。

 書庫を出てから再び空間魔法で断裂を作り、中へと入れないようにしておく。


「これで良し」

 

 僕は書庫の扉を閉める。


「んじゃあ……取りに行きますかぁ」

 

 僕は魔界へと向かう空間魔法を発動させた。

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