第9話

「依頼内容は簡単。私の護衛です」


「ほう……護衛」

 

 珍しい依頼内容に生徒会長が目を光らせる。

 生徒会長はどうしようもない戦闘狂である。強敵の気配でもして喜んでいるのだろう。


「事情を聞かせてもらおうか?」


「私は……あまり居ない見た目ですよね?」


 依頼人はそう言って自分の両手を上げて、その体の大きさを表現する。

 依頼員の身長は2mを越えている。

 この国の平均身長はあまり高くなく、165cmほどしかない。どんなに高くとも180n行くか行かないか、というレベルである。

 そんな中、2mを超える身長を持っている依頼人の存在感はとてつもないものだろう。

 僕と依頼人が並べば面白いことになるはずである。


「実は……私の先祖は既に滅亡している巨人族らしくてですね……それが原因で私のことを付け狙うような研究者、魔法使いが多くてですね……それに加えて新聞?というものが私についての記事を書くせいで……」


 あっ……。

 僕は依頼人の新聞、という言葉に固まる。僕の傘下の新聞社はこの女性のことなんて書いていない。

 しかし、後から続く形で入ってきた新聞社が一体何の記事を書いているかまだは完璧に把握していない。

 恐らくどこかの新聞社がマスゴミムーブをかましているのだろう。

 この世界には肖像権も、ストーカーを取りしまう法なんかも存在していない。

 彼女はこれからも……これ以上ないくらいに苦労することになるだろう。

 なんか……ごめんね。

 やっぱり性急に取り締まるべきかもしれない。他の新聞各社。

 

「それでは依頼とは、あなたの私生活を守ること……?」

 

 生徒会長が依頼人へと恐る恐る尋ねる。


「あ、いえ。私生活ではないんです。……えっと、実は今、とある方々に狙われていまして……」


「ほう!」

 

 それを聞いて生徒会長が瞳を輝かせて嬉しそうな声を上げる。

 おい。楽しそうな声を上げるなよ。


「ふわぁ……」

 

 パフェ食べたいな。まだ起きてから食べてないし。僕は異空間収納からパフェを取り出す。


「いただきます」

 

 僕は手を合わせてパフェを口の中へと運んだ。


「はぁー」

 

 後ろから深い……深いアルミスの溜め息が聞こえてきた。

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