第10話

 10年。

 僕がこの世界に生まれ落ちてからそれだけの年月が経った。

 カレアさんを汗だくにして匂いを堪能するどころか、普通に戦って圧勝できるまでに成長し、魔力面でも大きく成長した。

 魔法は未だに使えないけどね。しかし、魔法自体の存在は確認できた。カレアさんが使っていたのだ。

 僕も教えてもらおうとしたのだが、教えてはくれなかった。魔法が使えるのは10歳となって教会でしてもらえる儀式を終えてからなんだそうだ。

 

 人との交流は無きに等しいけどね。

 僕は家族や使用人を除き、親しくなった人はリーリエくらいである。リーリエは9歳になる少し前くらいまではちょくちょく遊びに来ていたけど、それ以来一度も来ていない。

 なので、二年間くらい家族や使用人としか交流していない。なんて閉鎖的な人間なんだ。

 

「10年間。お前は立派に成長し、一人前の男になった」

 

 そんな僕は今まで入ったこと無い少しだけ雰囲気の違う豪華な部屋で、お父様の話を聞いていた。

 なんかの式典みたいな感じだ。教会の儀式とは違うものらしい。なんか成人式みたいな感じだ。

 ……ところで、10歳で一人前の男は少し早くない?


「これよりお前をアレイスター家の人間として認め、我が家の仕事などもこなしてもらうようになる」

 

 ……。

 僕はそれを聞いて一瞬眉をひそめる。

 我が家の仕事……それ即ち、暗殺や諜報。表立っては言えないような仕事だ。

 それを僕がこなせるのか……いや、こなすしかない。

 出来ませんは認められないだろうからな。


「その証明としてお前に名前を授ける」


 ……ん?名前?

 すでにニクという名前があるのだが?


「旧名、『ニク』を捨て、お前にはこれから……」

 

 ……なるほど。旧名ね。日本も昔は節目に合わせて名前を変えていたし、そんな感じだろう。




「エルピス・アレイスターだ」


 

 

 お父様が僕の名前、それを告げる。

 え?

 僕は硬直する。頭が真っ白に染まる。

 今、なんて……?聞き覚えのある。偶然だと笑い飛ばしていたことが……僕の目の前に叩きつけられ、固まる。

 

 それからのことはよく覚えていない。

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