第45話

 ……。

 …………。

 沈黙が降りる。


「おい。何か言えや」

 

 僕は両手で体を隠すミリアを見下ろす。

 ミリアはただただ呆然と僕の方を見ていた。 


「ふぅー」

 

 そんな中、生徒会長が一人息をつく。


「まぁ、無理よな。紫紺の死神を暗殺するなど」

 

「うん。……というか、なんで僕を暗殺してくるんだよ……」

 

 僕は感情を曇らせ、仕事モードへと切り替える。

 ……美味しいパフェを作れるこいつは貴重だ。


「道具。僕は道具だ。命を受け、ただ振り下ろされるだけの道具に過ぎない。お前が父を殺されたことを憎み、復讐をするのなら僕でなく命を下した人間を殺すと良い。凶器を憎んでどうする」


 ミリアの父親。それを殺したのは僕だ。理由は知らない。ただ依頼があったから殺した。道具として。

 だが、僕の暗殺なんて不可能だ。ミリアとしても復讐対象を僕でなく別の人間にしてくれた方が楽だろう。

 それにミリアが上層部に噛み付いて少しでも被害を与えてくれればこちらも助かるからな


「な、なんで……お父さんを殺したの……?お、お父さんは……」


 ようやく発したミリアの言葉。


「知らんよ」

 

 それを僕はあっさりと切り捨てる。


「僕は道具だ。意思など持たぬ。当然依頼主も言わぬ。道具は何も喋らないからな。が、僕の正体にまでたどり着いたお前ならばいずれわかるだろう……お前の父親が何故殺され、誰に殺されたのかを」

 

 まぁ、僕は正体を一切隠そうとしていないので頑張ればあっさりと辿り着けてしまうのだが。

 

「わ……私、は……」


「憎いのだろう?父を殺した人間が。だから僕を狙った。だが、それは何の意味も持たない。僕が何か意思を持って殺したわけでもあらず。お前の復讐相手は別にいる。それだけよ。僕が言いたいのは。……あぁ。それと。お前はこれから永遠に僕にパフェを献上し続けろよ?お前はそれのために生かしているのだから」


 僕はそれだけ言ってミリアからは目を背ける。

 ……ふーむ。このまま僕がミリアを暗殺者として育て上げて上層部を皆殺しにしてくれるように裏から手回ししてみようか。

 ミリアってば割りと暗殺者の才能があると思うんだよね。


「……君は本当に紫紺の死神なのだな?」

 

 生徒会長が僕の方を感情の浮かばぬ視線を投げかけてくる。


「あぁ。そうだよ」

 

 僕はそんな生徒会長に向けて頷く。


「……そうか」

 

 生徒会長は一度頷き、口を開く。


「なぁ、アレイスター家とは、何だ?」

 

 素晴らしい。

 さすがは生徒会長だ。

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