第46話

 アレイスター家が何者であるか、その質問には答えない。

 黙り込んでいる僕を見て、生徒会長は勝手に話し始める。


「紫紺の死神。その暗殺者がそう呼ばれるようになったのは、襲いかかってきた数百人を返り討ちにしたときからだ。その際に暗殺者の両目が紫色に光り、紫色の光だけが舞っている。その様からつけられた二つ名だと聞いている」

 

 懐かし。

 あのときは上層部が普通に敵国のスパイがいる前で依頼について話したせいで、僕がいつどこに来るかを把握していた敵国の人間に待ち伏せされたんだよな。

 全滅させて、しっかりと暗殺対象も殺したけど。


「だが、この国にはずっと強大な暗殺者が暗躍し続けている。不自然にこの国の上層部の反感を買った人間は等しく何者かに暗殺されているのだ。『姿なき王』それがその暗殺者の名だ。……私は君が『姿なき王』なんじゃないかと思っている」


「へぇ」

 

 僕は感情のこもっていない声で告げる。

 ふふふ。流石は生徒会長だ。

 紫紺の死神と『姿なき王』を=で結びつけるとは……そんな事ができるのは生徒会長くらいだろう。


「『姿なき王』は建国以来ずっと存在している。ずっと、だ。もし、君が『姿なき王』なのであれば君の年齢が不思議だ」

 

 生徒会長は自分の言葉に確信を持っているかのように話し続ける。


「なぁ、君の父上は何者だ?」

 

 僕は答えない。


「もう一度最初の問いに戻ろう。アレイスター家とは、何だ?」 

 

 僕は答えない。


「アレイスター家。考えれば考えるほど。調べれば調べるほど。恐ろしく何もわからず、恐ろしく不思議な家だ。建国の時から存在している名家である落ちこぼれ。特産品も、アレイスター家の人間が特別なわけでもない。……これだけを見ればただただ栄光に縋っている落ちこぼれ家だろう。しかし、その領地での死亡率は驚くほど低い。スラムもなく、住む場所のない孤児もいない。孤児院の運営、学校の運営、病院の運営はしっかりと行っている。領地は貧しいのにも関わらずだ。運営のための資金はどこから来ている?それだけじゃない。アレイスター家は時折巨額の買い物をする。その内容まではわからなかったが、お金の流れだけは見つける事ができた」

 

 淡々と真実だけを語っていく生徒会長。やはりこの人は恐ろしいまでに優秀なのだろう。


「私はアレイスター家が『姿なき王族』だと断ずる。そして、私の目的は国家転覆。この国の癌を取り除くこと」


 生徒会長。

 戦闘狂のドMであり、そして、この国の転覆を狙っているヤバい人である。


「最後の問いだ。君の目的は何だ?『紫紺の死神』なぜ今表舞台に立っている?」


「僕の目的は─────」

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