第27話

 ガタガタ。

 ゴムなど衝撃を吸収するものがなにもないような状態で舗装されていない場所を進んでいる馬車は大きく揺れ、大きな音をたてながら進んでいく。

 少し窓の方へと視線を向ければ石が飛びはねて、木々に当たっているのを確認することが出来る。


「えへへ」

 

 僕の隣に座って僕がプレゼントした髪飾りを掲げて笑顔を浮かべているキャサリン。


「……」

 

 さっきからずっと無言を貫いているアルミス。


「んっ……」 

 

 勝手に僕の足をマッサージすると嘯いて、僕の足を持って……自分の股へと擦りつけて静かにオ◯ニーを楽しんでいる生徒会長。

 ……生徒会長……僕の足そんなに長くないんだけど……足引っ張らないで……痛いから。

 

「ふわぁ」

 

 僕はそんな面々を眺めながらあくびを浮かべる。

 別に眠いとか無いんだけど、あくびを浮かべるのはもはや癖に近い。

 僕たち一行は平和に馬車へと乗り、王都までの帰り道を進んでいた。


「ッ!?!?これはッ!?敵襲!?」

 

 そんな中。


「──────ッ!!!」

 

 生徒会長がいきなり立ち上がって叫ぶ。

 こちらへと近づいてきている敵の存在にようやく気づいたのね。確かに相手は巧妙に気配を隠しているけど……もうちょい早く気づくかと思った。


「え!?敵襲!?」

 

 それに対してキャサリンも慌てて立ち上がる。


「え?え?え?」

 

 その混乱は御者台で馬車を操っているマルボリの方にまで波及する。


「さて……」

 

 僕はゆっくりと立ち上がる。


「マルボリは馬車を止めて」


「は、はい。わかりました」

 

 僕の言葉にしたがってマルボリが馬車を止める。


「生徒会長。こちらへと向かってきている5人の対処は任せるよ。キャサリンだってちゃんと戦力になるはずだ。上手く使ってあげてほしい。僕とアルミスは少し、遠征してくるから」

 

「え?あ……そ、そう?任せてちょうだい」

 

 生徒会長はいきなりの僕の言葉に対して戸惑いつつも頷く。


「行くよ?アルミス」


 次に言葉を向けるのは沈黙を保ち続けていたアルミスである。


「あぁ」

 

 僕の言葉にアルミスが力強く頷く。

 そして……ゆっくりと立ち上がった。その体からは圧倒的な力の片鱗が漏れている。……天使としての力を出すのまだ早いよ?


「ちょっと待って……?あなたこの事態が起こるのを予見していたんじゃ……!少し前に二人だけで話していたし」

 

 あまりにも手際のよすぎる僕を疑問に思った生徒会長の言葉を無視して僕とアルミスは……悪魔が封印されている宝玉を持った男がいる方へと向かっていった。

 そんなこと気づかなくて良いんだよ。

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