第5話
「どうだろうか?俺の戦いぶりを見てくれただろうか?」
サブマは僕へと近寄ってきて喜々として話す。
「ちゃんとサブマ君を育てましたよ!これで良いんですよね?」
そして、リーリエも僕の方へと近寄ってくる。
「ふー」
僕はその二人を見て深く息を吐く。
完全に僕の失策だった。……サブマの成長速度を見誤っていたし、リーリエの心も未だに僕へとあるようだった。
サブマとリーリエがくっついているような素振りはない。仕事モードで確認しても二人は互いに友達以上の感情を抱いていない。
……別に断っても良いが……うん、だな。
その場合サブマもリーリエも積極的に僕へと絡んでくるだろう。
そして……リーリエがサブマへと興味を失い、二人の関係が疎遠になっていくようなことがあれば……大問題である。
僕へと向けられているリーリエの思いを、僕は一度見誤った。
もう見誤るわけにはいかない。同じ過ちを繰り替えすような馬鹿な真似はすることは出来ない。
もう、二度と。
これから先、サブマが全然ゲームと違う動きを取り出して、正常にイベントを踏まなくなれられたら大問題である。
サブマが対応をせず、悪化したイベントはツケとなって僕へと牙を剥くことになるだろう。
……僕がサブマと接触すればゲームのイベントに巻き込まれ、これまでの様に自由に動くことができなくなってくるだろう。
ただの面倒、邪魔でしかない。
それに上位の王侯貴族たちも黙っちゃいないだろう。
だが、サブマと関わって良いことがないわけではない。
僕も関わっておきたいゲームのイベントも存在しているし、僕の目的の事も考えると何処かのタイミングで必ず勇者と接触しなくてはいけない。
……お前は何だ?僕は何だ?アレイスター家の悲願は何だ?
己は何のために生まれ、何のために生きている?
「くくく。良いだろう。良き出し物であった」
僕は……僕は、口を開く。
もう……。
「じゃ、じゃあ!?」
「えっ!?」
「汝らを僕の友として認めてやろう。地を舐め、感謝するが良い!」
……戻れない。
「いや……それはちょっと」
「そうだよ!フフン!」
リーリエがそれと同時に僕へと抱きついてくる。
豊かな胸に僕の顔は挟まれ、女の子の甘い匂いが僕の鼻孔をくすぐる。
「えへへへ。やっとだぁ」
「邪魔だ」
「へぶし」
僕はリーリエを床へと叩き落とす。
「えへへへ」
それでもリーリエは僕に向かって笑顔を見せてくる。
「よろしくね」
リーリエの笑顔。
あぁ……。
そうか。
……僕は、諦めた。
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