第17話

 それからしばらく。

 全員が昼食を済ませた。


「ふぅー。美味しかった」


「片付けも頼むぞ」


「はい!わかりました!……あ、私が全員分持っていっちゃうね」


 リーリエが器用に僕、サブマ、ラザリア、……そして自分の分の食器を持ち、食堂のお皿の返却口の方へと向かっていた。


「あっ。ありがとう」


「……」

 

 サブマとラザリアはリーリエに対して頭を下げる。

 そして、お礼を言わない僕に対してラザリアは信じられないほど怒りに染まった視線を向けてくる。


「ふー。ただいまです」


「ご苦労」

 

 戻ってきたリーリエに向かって僕は超上から目線でものを告げる。


「はい!ありがとうございます」

 

 それに対してリーリエが笑顔で頷く。


「よし、と」

 

 僕はサブマの方に視線を向ける。


「薬だな」

 

 空間魔法から一つの瓶を取り出し、サブマの前に置く。


「これは魔天草を加工して作った薬だ。マルジェリアの知識から作っているから間違いない。マルジェリアの知識の信憑性は疑うまでもないだろう」


「あぁ。そうだな」

 

 マルジェリアの名声は留まることを知らない。あいつの名声は世界全土に轟いている。

 あいつの知識であると言えば誰もが信じるであろう。

 ちなみにラザリアは苦虫をダース単位で噛み潰したかのような表情を浮かべている。


「何に使うのかは知らないが……まぁ、大事に使えよ。二度もこんな面倒なものを作りたくない」


「……」

 

 僕の言葉に対してサブマは沈黙する。


「な、なぁ、これの作り方を教えてはくれないだろうか……?少ないとはいえ、世界には魔力排出症で死にそうになっている人たちがいる。その人たちを救うために……!」


「無理だな」


「……っ」

 

 僕はサブマの言葉を一刀両断する。


「そもそもの話、だ。魔天草はそんな簡単に採取出来るようなものじゃないんだよ」

 

 魔界の奥地に生えいている魔天草を取ってくることの出来る人間などごくわずかであろう。

 ……というか隠密行動に秀でたアレイスター家くらいだろう。

 マルジェリアが行ったとしても魔族に補足されて、多勢に無勢でやられるのが落ちだろう。

 

「諦めろ。それが特別なんだよ」


「そうだよな……すまない。無理を言った」


「あぁ、そうだな。大いに反省しろ」


「それで、だ。話は変わるが、エルピスも病人の元まで一緒に来てくれないのだろうか……俺が作ったわけじゃない薬をさも自分の功績のように出すのは気が引けるし、そもそも使うのが怖い。……どうだろうか?」

 

 サブマは僕のことを見上げながらそう尋ねてきた。

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