第15話

「世界最強の暗殺者。その一族。そんな僕らの訓練がまともであるわけがないだろう?」

 

 ……まぁ、僕はちょっと特別なのだけど。

 転生者であり、赤ん坊頃からはっきりとした自我を持っていた僕は暇つぶし感覚で魔力を操作していたので、魔力暴走なんか起こしたことないんだけど。


「それだけじゃない。幼少期からずっと血反吐を吐くような訓練を受けている。優秀な一族の生まれである天才が、赤ん坊の頃からほとんど遊ぶ時間も設けずただただ強くなるために英才教育を受け続けてきたのだ。格が違くて当然だろう?」

 

 ものすごい訓練を受けてきたのは事実だ。

 幼少の頃からずっと暗殺者になるための訓練を受け続けるというのは普通の子供には酷だろう。

 ……僕だって血反吐を吐いているからね……。


「お前はそんな相手を殺そうとしたんだ。……お前は何をしていた?僕を殺すために。努力が足りないのだよ。君の恨みが足りないのだよ」

 

「……っ」

 

 僕の言葉を聞いてミリアは顔を俯かせ、下唇を噛む。

 ふむ。なんでお叱りムードになっているのだろうか?いや、話し始めたのは僕だけど。


「いつまで座っている?訓練の続きをするぞ?」


「わ、私は……」


「お前では僕を殺せん。しかし、お前の父親を、という道具を使った上位の王侯貴族共なら殺せるように鍛えてやるよ」


「……!」


「だから、さっさと立つが良い」


「はい!」

 

 ミリアは元気よく頷いた。

 ……ミリアが上位の王侯貴族を殺す。まぁ、無理だろう。しかし、少しくらいは目立ち、威信を揺るがしてくれるだろう。

 僕はその間に裏から計画を進める。

 ……そのためにはミリアの犠牲も厭わない。

 しかし、ミリアが死ぬことがないように今。僕に出来る最大限のことをする。それが僕の義務だろう。

 

「じゃあ、やろうか」

 

 僕はナイフを構える。


「はい」


 それに合わせてミリアも戦闘態勢に入った。


「赤ん坊に魔力を流し、意図的に魔力暴走を引き起こさせる。どんな暴挙よ。赤ん坊を殺さないように魔力を流す技術を確立していることに狂気しか感じないわ」


 ミリアが大地を蹴り僕の方へと向かって距離を詰めてくる。


「……アレイスター家。あなたたちは一体どこに進んでいくというのかしら……」


 ミリアが僕に向かってナイフを振り下ろす。

 それを捌きながら僕はマルジェリアの独り言を耳に入れる。


 進む先。

 そんなものたった一つしかないだろう……。

 

 


 他にあるだろうか?


「ほい」

 

 僕はミリアの腹に向かって膝蹴りを叩き込んだ。

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