第8話

「……入るのは久しぶりだな」

 

 アレイスター家が屋敷。

 その地下……多くの施設が用意されている更に下。

 そこに一つの空間が存在していた。


 僕はそこにやってきていた。

 学院はサボった。

 ミリアと別れた後、すぐにこちらへとやってきたのだ。……別に僕はちょいちょいサボっているし、ほとんど生徒会室に要るし、別に構わないだろう。

 

「……」

 

 松明によって照らされているこの場所。

 ここにあるのは数えるのも馬鹿らしくなるほどの武器や、ご禁制と指定されているような物の数々。

 

 そして、部屋の中心に置かれている大きな石碑。

 その石碑へと僕は近づき、触れる。

 

「本当に久しぶりだ」

 

 冷たい石碑を撫でながら僕は周りを見渡して、数々の武器とご禁制の品々を吟味していく。

 ここに置かれている武器はすべてアレイスターのご先祖様が使っていた武器だ。当然……父親の物もある。

 処刑される前、王都へと連行される前に置いたのだろう。


「これ……これもあったほうが良いかな」

 

 多くの武器、ご禁制の品々。

 それらを前に選別をしながら持ち物を持っていく。

 いつもであれば空間魔法に全部仕舞い込んで行くんだけど……今回ばかりはそういうわけにもいかない。

 空間魔法をフル稼働する予定なのだ。異空間収納なんかに空間魔法のキャパを使うわけにはいかない。


「これらで良いか」

 

 僕は全ての準備を終える。服の裏側に持てる限りの……必要なものを持った。


「ふー」

 

 一度大きく息を吐き、石碑の方へと視線を向ける。

 そこに書かれている文字を……アレイスター家が心血を注いで情報を集め、残された文字を。

 そこにあるのは……我が家、数千年の……膨大な先祖の重み。


「……」

 

 今、それを僕は背負っているのだ。

 僕に並び立つ者は何もない。今、マルジェリアと戦っても容易く勝利出来るだろう。


「行ってくるよ」

 

 僕はここに眠っている先祖の霊へと一礼し、この場を立ち去る。

 ……勝っても、負けても、僕で全てが終わる。終わってしまう。

 こんな、どうしようもない転生者である僕が刃なのだ。

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