第11話
レーヤ商会。
一度、僕と敵対した商会である。
その時に僕は自分の傘下の商会を使って商売相手を全部奪い取って、悪評を流しまくった挙げ句にものすごい優秀だった当時の商会長を暗殺して半壊させた。
……そんな相手を前に僕はどんな表情を浮かべれば良いのかな?まぁ、普通に表情一つ変えることはないんだけど。
「レーヤ商会……」
隣に座っている生徒会長がレーヤ商会という言葉を聞いて意外そうに呟く。
レーヤ商会の悪評は王都に住む人であれば全員が知っているほどに広がった。生徒会長もレーヤ商会について知っているのだろう。
「……ははは」
それに対して依頼人は乾いた笑みを浮かべる。
「私たちの商会には悪評が尽きませんし、今でも残っていることを意外に思っているでしょうね」
……せやね。
僕もとっくの昔に倒産していると思っていたよ。
「私たちは汚水をすすりながら現在までギリギリのところでここまでやってきたんですよ。商いの相手を悪評を知らない地方の村に絞るなどの工夫を行いながらです」
なるほどね。
地方の村とか僕はこれっぽちも気にしていないしな。情報網に引っかからなかったことにも納得がいく。
「今回はそんな中得た久しぶりの大きな商談なんです。だからこそ、確実に今回の商談を失敗するわけにはいかないんです」
「なるほど……そんな思いがあるのね。では、その依頼を私たちが責任持ってお受けしましょう。私たちが動く以上失敗はない。安心して任せてちょうだい。……良いわよね?」
生徒会長が僕の方へと言葉を振る。
「おう。良いぞ」
「「……え?」」
あっさりと頷いた僕に対して生徒会長とアルミスが驚く。
「何を驚いていやがる」
「あっ!そ、そうな……。依頼の詳細は受け取ったわ。それではまた明日。約束の時間で」
「はい。……本当にありがとうございました」
依頼人が僕たちに向かって深々と頭を下げてこの部屋から退出していった。
……扉が外に出ていくためにわざわざ頭を下げたぞ……どんだけデカいんだよ。相手に威圧感を与えるという意味で、交渉の場では有利に働きそうだな。あれ。
「それにしてもお前が了承するなんて意外だったぞ」
僕の後ろに立っているアルミスがボソリと呟く。
「あぁ……まぁ、贖罪のようなものだ。レーヤ商会をボコボコにしたのは僕だからね。傘下の商会を使って商売相手を全部奪い取って、悪評を流しまくり、商会長の暗殺までしたからね」
「……は?」
僕の言葉を聞いてアルミスが信じられないものを見るかのような視線を僕の方へと向けてきた。
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