第18話

「嘘だと言う根拠は?」

 

「この私の目よ!私の魔眼はどんな嘘も見逃さないわ!」


「お前の魔眼を信用出来る要素は?初対面でいきなり喧嘩をふっかけてくるような人間の魔眼なんて信用出来るか」


「なっ……!」

 

 僕の言葉にラザリアは言葉を詰まらせ、更に怒りの表情を濃くしていく。

 魔眼を信用出来ない。そんなことを言われたのは初めてだろう。


「というか僕に対して因縁をつけてくるのを辞めてくれ。迷惑だ。邪魔なんだよ。……授業に遅れるぞ?お前らのせいで遅刻とか嫌なんだが?」

 

 僕はそう吐き捨て、さっさと僕の前に立ちふさがっているラザリアの横を通り抜ける。


「あっ!待ちなさい!」

 

 だがしかし、服の袖がラザリアに掴まれる。


「えぇい!止めるな!邪魔だ!袖を掴むな!制服が伸びるだろ!」


 僕は腕を振り払う。


「……ったく」


「行かせないわよ!」


「なんで僕はそんなことを言われなきゃいけないんだ?別に僕がお前の命令に従わなきゃいけない道理はないだろう?ここは実力主義の学校だぞ?貴族の権力など何の役にも立ちやしない。……というか、本当に遅刻するんだが。回りを見ろよ。全員僕らに注目していて、まだ誰も教室に向かっていない……最初の授業で一年生全員が遅刻とかどんなお笑いだ?」


「でも……!あなたは嘘をつき、リーリエを傷つけて!」


「お前の友達を思う気持ちは認めよう。しかし、迷惑だ。俺は知らないと言っている。そして、お前の魔眼が信用に値しない、とも」


「だが!」


「もう良いよ」

 

 一生食らいついてくるラザリアをリーリエが止める。

 良し!ナイスだ!


「そいつももう良い。と言っているところだ。僕は先に行かせてもらうよ?」

 

 僕は今度こそ二人の横を通り過ぎる。……今回は服の袖を掴まれなかった。良かった……。


「ほ、本当に覚えていないんですか!」


 そのまま教室に向かおうとする僕に、性懲りもなくリーリエが声を投げかけてくる。


「ちっ」

 

 今一度舌打ちをしてから振り返る。


「あぁ。知らねぇな。お前のようなおっぱいのデカい女は知らん」


「おっぱ……ッ!?」


「……?」

 

 僕のどストレートな言葉にリーリエが顔を真っ赤にして胸を手で抑え、ラザリアは首を傾げる。

 ラザリアは魔眼によって僕から嘘を感知出来なかったから首を傾げているのだろう。

 おっぱいのデカい女を知らない、というのは本当だ。僕の記憶の中のリーリエはまだふっくら程度だった。

 ……人間の成長は速いな。


「今度こそ失礼するぞ」

 

 僕は彼女たちに背を向け、教室へと向かった。

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