第38話
闘技場。
そこで僕と生徒会長は向かい合っていた。
生徒会長は動きやすい服に着替え、自分の得物である剣を持っているのに対し、僕は変わらない制服姿で両手もポケットに入れているという舐め腐った態度だった。
まぁ、暗殺者である僕にとって私服こそ最大の装備だが。
「じゃあやろうか?いつでも来て貰って構わない」
僕は両目に魔力を込め、瞳を紫色に光らせる。
魔法術式。
僕はそれを両目に仕込んでいるのだ。魔力を流せば発動するように。魔眼と同じ原理である。何故かは知らないが、瞳は魔力を流しやすいのだ。
右目は第十二階位に分類される空間歪曲魔法。左目は第十一階位に分類されそうな僕オリジナルの視界転移魔法。
空間歪曲魔法は、歪曲させた空間に存在しているもの全てを打ち消す。全体を覆うように空間歪曲魔法を使えば完全防御である。
まぁ瞳に込めた小さな魔法術式ではそこまでの出力は出さないけど。
視界転移魔法は視界に映っているどこにでも飛べる。
「ふふふ。その余裕!今すぐに引っ剥がしてあげるよ!」
生徒会長が魔力を開放し、その体を魔力が包み込んだ。
「いくらでも魔法を使うがよい。最大の魔法の発動まで待ってやろう」
「ふふふ。その一言を後悔させてあげるよ」
生徒会長はそう言って魔法術式を描き始める。
生徒会長が得意な属性は炎。
僕と一番相性の悪い属性だろう。
「『第九階位魔法───黒炎神楽』」
世界を焼く、光をも通さない黒炎が僕に迫ったくる。
その黒炎は踊っているかのように僕の方へと迫ってくる。
「それで?」
そんな黒炎は、一瞬で消滅する。
僕の空間歪曲魔法によって。僕の視界に映るもの全てを歪曲させ、消すことができる。こんなの脅威たり得ない。
基本的に炎魔法は炎を生み出し、それを飛ばして攻撃してくる。
目で簡単に捉えられる。僕との相性は最悪と言っていいだろう。
「……っ!?」
「次は?」
驚愕する生徒会長に僕は告げる。
「ははは」
生徒会長の口から笑い声が漏れる。
「ハッハッハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
生徒会長の大きな笑い声が闘技場内に響き渡る。
「いいぞ!いいぞ!これだ!これこそが戦闘だ!この高揚!この危機感!これこそが私の求めていたものだ!」
生徒会長は狂ったように笑い、僕をイッちゃっている瞳で見つめる。
「私を負かせてみせろッ!」
「言われずとも」
そんな生徒会長に不敵に言葉を返せる僕は……すでに日本基準で言えば、とっくに壊れてしまっているのだろう。
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