第26話

「ふんふーん」

 

 僕はチェロスを頬張りながら町中を歩く。


「お前……まだ甘味を食べるのか」


 そんな僕を見て隣に歩いているアルミスが呆れたように呟いた。


「当たり前でしょ?甘味こそが僕の原動力だからね」

 

 僕とアルミスは特になにかの用事があるわけでもなく、ただぶらぶらと町中を歩いていた。


「オイッ!」


「やっ、辞めてッ!」

 

 意味もなく歩いていると、少し離れたところから男の怒号と悲鳴が聞こえてくる。


「……誰が襲われいるのか?」


 それを聞いてアルミスはぽつりとつぶやく。


「良し。助けに行こうか」

 

 僕は頷き、声がしてきた方、スラム街に向かって歩き始める。


「……え?」

 

 それを聞いてアルミスはぽつりと疑問の声を上げる。


「君が……人助け!?何の冗談だい!?」


「喧嘩売っているの……?僕は目の前で困っている人がいたら必ず助けるよ?」

 

 目の前で困っている人がいたら必ず助ける。それが僕に課した自分ルールだ。


「えぇ……」


「四の五の言わないの。早く助けに行くよ?それで死んじゃったりしたら大変でしょ?」


「あ、あぁ。そうだな」

 

 僕とアルミスはスラム街を歩いていく。

 しばらく歩けば、数人で誰か一人を囲んでいそうな態勢をとっている大男たちを見つける。


「はい。ストップ。……君達カツアゲは駄目だよ?」


 僕は大男を倒して椅子のように這いつくばらせ、その上に座って告げる。

 ……そして、男たちに囲まれていた男が見えるようになる。

 ボコボコに倒されて地面に転がっているせいで顔は見えなくて、それが誰なのかはわからなかったが、着ている服が王立騎士学院の制服だった。

 彼は王立騎士学院の生徒なのだろう。

 ……貴族相手をボコすってこいつらマジかよ……。

 まぁこいつらだしな……囲んでいる男の腕に彫られているタトゥーを見て内心つぶやく。

  

「なっ!?誰だ……!いや、これはカツアゲじゃね!正当な権利だ!」


「いいや。カツアゲだ。ごあいにく様。それらの見分けは完璧につくんだ。こう見えても裏の人間でね。君達が何者か。僕はそれを正しく理解しているよ?……動くなよ。椅子が」


「ぐほっ」

 

 僕は自分が座っている椅子の腹を蹴り、黙らせる。なんか高さが低くなって、足が地面につくようになっちゃったけど、別に良いよね?


「さてはて、どうする?君達?このまま続けて僕にボコボコにされるか、それともこの場で矛を収めさっさと退出するか、どちらでも好きな方を選ばせてあげるよ」

 

 笑顔で告げる僕。そして、人間を椅子にして告げる僕を見てドン引きしているアルミスが大男たちの前に立った。

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