第2話
「……エルピスよ」
「なんでしょう?お父様」
地下。
アレイスター家の地下に存在している特別な地下室の一室に僕とお父様が向き合って座っていた。
「我々は常に不当な扱いを受けてきた……ずっと、だ。汚名を着させられ、領地を発展させることも満足に許されてこなかった……我々はそんなものにノーを突きつけなければならない」
「はい。理解しています」
僕はお父様の言葉に頷く。
「だが、我々にあるのは奪う力だけだ。領民を守る力も、発言力も、経済力もない。あるのはただ一人の人間を奪うだけのちっぽけな力があるだけだ」
……これ以上悲しい告白もあるだろうか?人を殺すこと以外何も持たない。そうはっきりと断言しているのだ。
「しかし、我々には人から命を奪うための技術の一つとして、人心掌握術をマスターしている」
……そうだねぇ。
「これで発言力を増せる……なんてことは無理だろう。どの最上位貴族も王族も我々との深い接触は避ける。しかし、唯一接触出来る存在がいる。それがお前がこれから通う学園にいる子供たちだ」
なるほどね。
こんな感じで話が進んでいたんだね……ゲームでの回想ではここらへんの細かい話は飛ばされているので、こんな感じで話が進んでいたのかと感心する。
「お前ならば学園に通っている彼ら、彼女らと接触し、その心を掴んでこれるだろう。男はある程度で構わない。しかし、全てのご令嬢を惚れさせろ。これ以上無いくらいに。依存させろ。女を依存させる方法はすでに教えているだろう?我々はそこで得たコネを利用し、発言力を高める」
……この作戦は失敗する。何度もリターンを繰り返し、人心掌握術を異次元レベルでこなす主人公に邪魔され。
こんな作戦をするわけにはいかない。
別にこの世界はゲームじゃない。主人公は別にコンティニューしないし、数多のエロゲで培った人心掌握術、テンプレを知り尽くし、完璧に選択肢を選ぶプレイヤーのような神プは出来ないだろう。
惚れさせ、依存させることは多分出来るだろう。
だが、ヒロインたちを惚れさせるとか地雷の極み。
自分の娘と僕が接近していることに焦った王族、貴族たちが慌ててお父様に対して冤罪をふっかけてそのまま処刑してしまう、という最悪の結末へと繋がってしまう。
僕がヒロインと関わる=お父様の死。そう考えるべきだ。
「お父様……」
僕はお父様のことを呼ぶ。
「やってくれるか」
お父様の少しだけ喜びの混じった言葉と頼もしい者見る視線。
それに対して僕は───────。
「もしかして馬鹿なのですか?」
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