第32話

「終わったみたいだね」

 

 僕はアルミスの方へと言葉を送る。


「えぇ……そっちの方も私の方に任せて……え、エゲツないわね……」

 

 僕の方へと視線を向けてきたアルミスがボソリと呟く。

 アルミスの視線の先に居るのは僕のおもちゃとなっている悪魔である。


「ま、まぁ……良いわ。後のことは任せてちょうだい。私が殺してあげるから」


「ん……?あぁ、別に必要ないぞ?」

 

 僕は煌剣を携えてこちらへと近づいてくるアルミスに向けて口を開く。


「え?」


「ほいしょ」

 

 そして僕は空間魔法を発動させる。

 動けない空間に引きずり込んでゆっくり低温でコトコト煮込んでいた悪魔を、別の空間へと移す。

 悪魔に『死』を与えられる空間へと。


「おーわり」

 

 もう既に何度も殺した。

 肉体を潰し続けた……だが、悪魔は何度でも復活して蘇る。

 人間では悪魔という存在に対して残念ながら『死』を植え付けることができないのだ。

 ならば、どうするか。

 単純な話だ。

 この世界で『死』を植え付けることが出来ないのならば、別の……悪魔に『死』を植え付けられる世界に悪魔を引きずり込んでから『死』を与えてやれば良いのだ。

 サクッと悪魔は存在をさよならバイバイされる。

 

「は……?」

 

 僕の手によってあっさりと殺された悪魔を前にアルミスが驚愕の声を上げる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!?」

  

 その驚愕の声は天へと届かんばかりである。


「ちょっ!?えっ!?はっ!?何!?なんで殺せるの!?意味わからないんだけどッ!?」


「何度も言っているだろう?僕に殺せない存在なんていないの」

 

 悪魔が人間に殺されないのは世界の法則に過ぎない。

 世界の法則を無視出来る僕には何の意味もない。

 法則なんてちゃちなものに頼らないで、世界魔法で自分が死なない世界を自分で作らないと何の意味もない。

 世界の強制力と法則の強制力はぜんぜん違うからね。


「ど、どんだけ理不尽なの……」


「まぁ僕がやっていることって神様と同じだからね?ただちょっとだけ規模……というか強制力がショボいだけで」


「……あなたって本当に人間なの?」


「失礼だな。人間だよ」

 

 僕はアルミスの言葉に対してイケボで返す。


「人間とは心の生き物だ。意思の生き物だ。姿かたちなどどうでも良い……まぁ、普通に姿かたちとしても僕はちゃんと人間だよ。普通に殺されちゃうしね」

 

 アレイスター家の攻撃力は化け物クラスだけど、普通に防御力は人間クラスだ。

 普通に剣で首を斬り落とされるし、首が落ちれば死ぬ。


「……君なら死ななそうだよ」


 僕であれば死んだとしても転生するだけかも……?

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