第13話

 僕の転移した先。

 そこは学院の図書室……しかし、それは元々の図書室の姿が何もかもが変わっていた。

 きれいに棚に収納されていた本は中を浮かび……浮かんでいるのは本だけではなく、本棚まで浮かんでいる。

 図書館に備え付けられているステンドグラスの窓から差し込まれている光は、太陽の温かい光ではなく、禍々しい紫色の光だ。


「……ッ!エルピス!」


「……来たか」

 

 そして、そんなこの場所で立っているのは、マキナとサブマ。

 背中に巨大な漆黒の三対の翼を持ち、膨大かつ禍々しい力をその身に宿しているマキナと、既にボロボロの状態で聖剣を構えているサブマ。

 そんなサブマの近くには、リーリエとラザリアが気絶して倒れている。


「邪神ッ!!!!!」


 僕の隣に立っているアルミスが邪神を見て叫び、睨みつける。

 

「……っ」

 

 マキナはアルミスのことを見て、そっと息を飲む。


「ふふふ……」


 その後、マキナはその表情を歪ませ、笑い声を漏らす。


「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 

 そして、口元を三日月のように割れさせ、大きな笑い声を上げる。


「良いわ!良い客人だわッ!まさか人類の希望が二人もこんなところで狩れるだなんてッ!……なんて素晴らしいのでしょう……あの忌々しい女も死んだようだし……これは案外早く人類を滅ぼせるかしら」

 

 マキナから漏れる笑顔、声、雰囲気。

 それらはどれもこれも禍々しく、生きとし生きる人すべてに嫌悪感を与える。


「ふっ」 


 僕はそんな存在を前に微笑を漏らしてから、マキナを無視して倒れているリーリエとラザリアの元に向かっていく。


「起きてよ。ふたりとも」

 

 僕は二人に空間魔法から出した水をぶっかけてやる。


「あぶっ!?」


「はぁ……」

 

 水をぶっかけられただけで二人は簡単に意識を取り戻す。

 これで僕の空間魔法に残っているものはたった一つだけ。


「起きた?ふたりとも、体はそんなに痛いと思うんだけどね」

 

 僕は呆然としている二人に笑顔で言葉を話し、自分の気の抜けた雰囲気を保った。

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