第36話

 南の方に存在しているとある侯爵領の屋敷でパーティーが行われていた。

 様々な貴族が訪れているこのパーティを僕は楽しんでいた。

 

「美味し」

 

 パーティーで出される料理をつまみ食いしながらぼーっとその時が来るのを待つ。


「それでは皆さん!」 

 

 今回の暗殺対象である侯爵家当主が全員の前に立ち、話し始める。

 その男の隣には奥さんと娘さんの姿も見える。


「今後訪れるさらなる我ら南方貴族の繁栄に乾杯!」

 

 動くか。


「『残念ながら繁栄が訪れることはない』」

 

 闇が。

 闇がこの場を支配する。

 明るくこの場を照らしていた照明は地面へと落ちる。


「なっ、何事!?」


「誰だ!?」

 

 当然のことにその場は騒然に包まれる。


「『君の運命は既に潰えた』」

 

 暗闇の中、

 二つの光が、紫紺の光が灯る。


「ヒッ!?」


「し……紫紺……」


「紫紺の死神ッ!?」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」


「何で!?何で外に出れないのッ!?」

 

 この場にパニックが蔓延する。

 恐怖がこの場を支配する。

 ゆっくりと僕は前へ前へと進んでいく。

 紫紺の光が妖しく踊る。

 

「な、何故……」

 

 そして、僕は驚愕と恐怖に体を震わしている侯爵家当主の前に立つ。


「辞めッ!?来るなッ!?来るなァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!」


 侯爵家当主は無様に転がり、僕から少しでも離れようと


「死にたくないッ!死にたk」

 

 血飛沫が。

 頭が転がり、血飛沫が辺りを真っ赤に染める。

 今、一つの命がゴミのように散った。 


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」


「あなた!あなた!あなたッ!!!」

 

「『自らの愚かさは他者へと波及する』」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」


 僕は次に侯爵家当主の娘さんの方へと短刀を滑らせ、両足を斬り落とす。


「痛いッ!痛いよッ!お父さん!お母さん!助けッ……ヒッ!?触らないで!?離して!?離して!?」


「レア!?レア!?」

 

 娘さんの悲鳴と奥さんの絶叫。


「『一家はすべてを失う』」

 

 次に僕は奥さんへの方へと短刀を滑らせる。


「─────ァ」


 奥さんの喉から真っ赤な花が開く。

 

「『赤く、紅く、朱く』」

 

 僕は奥さんと娘さんを空間魔法で収納し、消す。


「『会はこれにて閉幕。皆さんご機嫌よう』」

 

 僕は魔法を解除する。

 紫紺の光が消え、この場に光が漏れる。

 闇から解放された窓からほのかな月光がこの場を照らす。

 月光に照らせれ顕になるのは真っ赤な血と既に事切れた侯爵家当主の姿だった。

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