第46話

「……ん?」

 

 『そろそろか』

 そのミリアの一言とともにサブマとミリアが距離を取る。

 それに対してアズカバンが首を傾げる。


「ッ!?!?」

 

 そして、その疑念が浮かんだ表情は驚愕と苦痛に歪むこととなる。

 ミリアの魔法だ。

 蓄積されていた毒が一気にアズカバンへと牙を剥いたのだ。エルピスの指導の元作られた毒は魔族ですら容易く蝕む。


「封印術!鳳鎖!!!」

  

 サブマが叫び、封印術を発動させる。

 地面から幾つもの鎖が走り、アズカバンの体を雁字搦めにする。

 鎖一つ一つが封印術を帯びていて、アズカバンのステータスを封印して力を抑える。


「クッ!こ、れは……!」

 

 アズカバンが驚愕し、言葉を詰まらさせる


「『シエロカエール』」

 

 ラザリアの魔法によって膨大な風と圧倒的なまでの空気の塊……エアプレスを遥かに超える空気の塊がアズカバンを抑える。


「クッ」

 

 それに対してアズカバンはたまらず地面に片足を着く。


「封印術、土壌墓石」

 

 ミリアも封印術を発動させる。

 地面から砂が上がってきて、ゆっくりとアズカバンの体を拘束する。

 ミリアとサブマの封印術。

 それは確かにアズカバンの動きを止めていた。


「天剣ッ!!!」

 

 そんな中、一人の少女の声が響く。


「なっ!?」

 

 アズカバンが倒したはずのリーリエ平然と立っていて、魔法を発動させていた。

 リーリエは回復魔法が使える。自力での復活が可能なのだ。


「……ッ」

 

 アズカバンの上に浮かんでいる巨大な光の剣。

 それを見てアズカバンは息を呑んだ。

 アズカバンは理解する。これを受ければ自分もただで済まないと。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!!」

 

 リーリエが叫び、アズカバンの頭上へと天剣が落ちた。

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 アズカバンの声が響き渡り、大きく土埃が舞う。

 ミリアとサブマはアズカバンの動きを完全に停止させるためにさらなる封印術の発動の準備を進める。

 そんな中。

 



「すさまじいな……素晴らしい武人たちだ」

 


 

 アズカバンの強い声が響く。


「だがもう終わりだ。そろそろ終幕と行こう」

 

 光が舞う。

 

「ふー」

 

 平然とアズカバンが立って歩き、土埃から出てくる。


「そんな……」

 

 ミリアとサブマの封印魔法も、ラザリアの魔法も無効化されていた。

 天剣が与えたダメージも全て回復魔法によって治されてしまっている。


「うそ……魔法が、発動……しない?」

 

 それだけじゃない。

 再び魔法を発動しようとしても上手くいかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る