第21話

「……終わったっぽいな」 

 

 ポツリと僕は独り言を漏らす。

 僕の優秀な空間魔法によってなんか商談をまとめたっぽいマルボリたちを把握出来ていた。


「ほへ?」

 

 僕の一言にパンパンに料理を詰め込んでいるキャサリンが疑問の声を上げる。

 

「……お前はさっさと食べ終えて。色々と君は抱え込みすぎね?」

 

 キャサリンの両手に握られている大量のご飯の数々。夏祭りで騒ぐガキかな?


「もぐもぐ」

 

 キャサリンは一生懸命口を動かす。

 そして、口の中の物をすべて無くしたキャサリンが口を開く。


「終わった、って何が?」


「ん?商談」

 

 僕はキャサリンの疑問に言葉を返す。


「え?そんなことなんでわかるの?」


「空間魔法であの三人が何をしているかはちゃんと把握しているからね。……マルボリが笑顔で取引相手と思われる相手と握手をしているよ。あれは多分上手くいったね」

 

 ……というか、相手の商人。僕の知り合い……うちの傘下の商会の商会長だな。あの男が直接動くって一体何の取引なんだ?そこそこどころか、かなりデカい商談じゃないか……。


「え?そ、そこまでわかるの?」


「おう」

 

 僕はキャサリンの驚いた言葉に頷く。

 空間把握くらい完璧にこなせないと暗殺者として超一流になれない。


「さっさとそれらを食べ終わって?そろそろ戻ろうと思うから」

 

「……はい」


 キャサリンは僕に食べかけの串焼きを数本渡してくる。


「は?」


「食べるの手伝ってよ」


「……えぇー。自分で食べるって言ったんじゃないか」

 

 僕は若干の不満を覚えつつも串焼きを受け取って口に含む。


「はうわ!?」


「……?」

 

 いきなり大声を上げたキャサリンに僕は首を傾げる。

 ……え?何?間接キスに恥ずかしがっている……いや、それは違うよな?僕はキャサリンのケツの穴のシワの数まで把握しているぞ?

 まぁ、別に大したことではないだろ。無視で構わないだろう。

 

「ほら。さっさと食べろよ」

 

 僕はそう言いながら、串焼きを口に含む。

 

「う、うん……」

 

 キャサリンは慌てながら手に持っているたくさんの食料を食べ進めていく。


「ごちそうさま」

 

 しばらく経って。

 ようやくすべての物を食べ終えることに成功した。


「お腹いっぱい」

 

 キャサリンは満足そうに少しぽっこりと出ているお腹をさする。


「それは良かった……うし。さっさと転移してしまうぞ」

 

 僕はキャサリンに手を向ける。


「ほら、掴め」


「う、うん……」

 

 キャサリンは僕の手を恐る恐る掴む。

 サクッと空間魔法を発動させて、マルボリたちの方へと転移した。

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