第22話

「よぉ……久しぶりだな」

 

 僕はマルボリたちの商談の中、堂々と転移で現れる。

 そして、マルボリの商談相手である男に気さくに声を掛ける。


「ちょっ!?何をしているんだよ!?」

 

 そんな僕に対してアルミスが狼狽する。


「ッ!?」

 

 そして、アルミス以上に狼狽しているのが商談相手の男。

 テレシア商会の商会長を勤めている恰幅の良いハゲ男、レーヴァ・テレシアだ。

 

「ろ、ロキ様……」

 

 レーヴァが僕のことをロキと呼び、深々と頭を下げた。


「……え?」

 

 そんな光景を前にしてアルミスたちが首を傾げる。


「こ、これは……ち、違くてですね……我々が叛意を持っているというわけではなく……」

 

 レーヴァはまるで何か言い訳をするかのように言葉を重ね続ける。

 ……なんでこいつはこんなにも焦っているんだ?


「あぁ……」

 

 考えたところで理由が思い浮かぶ。

 こいつか。僕はマルボリの方へと視線を向ける。


「別に気にするな。レーヤ商会に対して恨みがあったわけではない。お前らが取引しようと何の問題もない」

 

 僕はレーヴァの耳元へと顔を近づけ、耳打ちする。

 

「はぁー」

 

 それを聞いたレーヴァがまるで魂が抜けたかのような深いため息を吐く。


「な、なっ……何が起こっているんだ?」

 

 アルミスが困惑のまま言葉を漏らす。

 マルボリは僕の行動によってせっかくの商談がご破産にならないかと狼狽えて瞳に涙を浮かべていて、生徒会長は納得がいったように頷いている。

 キャサリンはぼーっとしている。多分何も理解していないだろう。


「……なんでお前がわからないんだよ……簡単な話だよ。レーヴァが経営している商会は僕の傘下だってことだよ」


「ロキ様!?」

 

 あっさりとテレシア商会が僕の傘下であることを話したことに対して、レーヴァが驚愕している。

 ちなみにアレイスター家が様々な商会に影響力を持っているのは五賢会の面々でも知らないような最重要情報の一つである。


「こいつらなら大丈夫だ。僕が選択を違えることはない」


「そ、そうでしたね……」

 

 僕の言葉にレーヴァが頷く。

 ……選択を違えることはない!って言っておきながら僕はちょいちょいやらかしているけどね。


「僕は二人の商談について何か話すつもりはない。二つの商会の良き出会いを祝福するよ」

 

「か、感謝申し上げます。そ、それでは……」

 

 レーヴァはまるで逃げるようにこの場から退室した。

 んー。僕ってばちょっと恐れられすぎかなぁ……。


「な、な、な、何者なんですか……」

 

 マルボリが困惑とともに一言呟いた。

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