第9話

「そろそろだな……」

 

 僕はとある極東の国家の地にてボソリと呟く。

 極東の国家の地には暗殺者の仕事としてやってきていているのだ。

 お父様が死んでしまったことによって、アレイスター家がこなさなくてはいけない仕事を僕一人でこなさなくてはいけないのだ。

 僕が娼館にこもっている間も五賢会から仕事の要請が山のように来ていた。恐らくだけど、五賢会はこのまま僕を仕事漬けにして……


 王都に僕が居てはいけない……今思えば普通に娼館に引きこもるのではなく、仕事で世界各地を回っていた方が自然だ。

 なんでそんな簡単なことにまで頭が回らなかったんだろうか……?

  

「ようやくか……」

 

 恐らくだけど……そろそろ動いている頃だろう。新聞社が。

 アレイスター家と五賢会についてに記事に書いていて、今王都の方は大混乱となっているだろう。


「ぐ……っ、あぁ……痛い……痛い……殺してくれ……」

 

 隣の方で……なんとも言えないうめき声が聞こえてくる。


「ん……?あぁ、忘れてた」

 

 僕はボソリと呟き、隣の方へと視線を向ける。

 そこに居るのは拷問されて人としての原型をもはや留めてすらいない肉塊。

 ……そっか。まだ命を奪ってはいなかったか。拷問する形で


「……もう、死んでいいよ」

 

 僕は肉塊となった……誰かの命を完全に奪って見せる。

 

「チュンチュン」


「あぁ……もう行って良いよ。しっかりと頼むね」


 僕は隣で鳴いている小鳥ちゃんの方へと視線を向ける。 


「ちゅんちゅん」 


 アレイスター家によって教育された小鳥が飛び立っていく。

 小鳥の腹の中には情報が書かれた紙が書いてある。

 この小鳥の腹をかっさばいて、情報が書かれた紙を取り出すのである。機密性はそこそこ高い。

 アレイスター家の人間であれば……殺さずに小鳥の腹をかっさばけるけど、他の人間は無理だろうから、この小鳥は死んでしまうだろう。

 ……可哀想に。

 僕は無表情で小鳥を見下ろす。

 

「ふー」

 

 僕は深く息を吐き、空を眺める。

 星と月が輝いている夜空を。


「帰らないとだな……」

 

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