第18話

 ハイエルフは対悪魔対策として、様々な対抗手段を作ってきていた。

 悪魔を封印することが出来る宝玉もハイエルフの作ったものだ。


 ハイエルフは見事、人類が悪魔に対抗するための手段を確立してみせた。

 しかし、ハイエルフにはもう一つやらなくてはいけないことがあった。

 それがとある病魔の研究だ。

 

 病魔。

 邪神を撃退し、悪魔の大部分を追い払った後の人類に襲いかかってきた病だ。

 人々がその病魔に侵されたら最後、理性を失い、体をぐちゅぐちゅに溶かしてさまよい続けるゾンビとなってしまう。

 今はその病魔を大規模な封印術を使うことで隔離。

 なんとかやり過ごしているような状態となっている。

 それでも定期的に病魔が漏れ出して人間をゾンビへと変えてしまって……最悪の奇病として恐れられているんだけど。

 しかも、病魔の封印術が年々弱まっていることによって症状の発生率が緩やかに上昇している。

 そして、この病魔には罹らないとされていた、抵抗を持っていたエルフたちですらこの病魔に侵されることとなってしまっていた。

 

 ハイエルフに任されているのはこの病魔の解決法を模索すること。

 

「それで?解決策は見つけたのか?」


「いや……まだじゃ……」


「だろうな」

 

 僕はハイエルフの言葉に頷く。

 『だろうな』

 僕の答えはこの一言に尽きる。


「……本当に驚かないのだな」


「アレイスター家は邪神を殺すために様々なものを磨いてきた。……神殺し。その最終兵器として目をつけていたのが世界魔法だ。独自の世界へと相手を誘い、殺す。これが最も可能性が高いので……アレイスター家は世界魔法について結構詳しく調べていたんだよ」

 

 世界魔法についての研究。

 それが一番進んでいるのはアレイスター家であろう。


「多分だけど……あの病魔は神が齎した『モノ』。邪神かなんかの世界魔法だろうよ。世界魔法の研究を続けた結果の結論だ……世界魔法でもなければあんな化け物じみた効果は出せないし……ただの人間、悪魔、天使にこの規模で世界魔法の効果を及ぼす事はできない。」


「「「……っ」」」

 

 僕の言葉を受けてハイエルフたちは下唇を噛み、視線を下へと下げた。

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