第29話

 地面へと転がった宝玉に大量のヒビが入る。

 

「……ッ」

 

 そのヒビから大量に魔力が漏れ出していく。

 最初に漏れ出していたのは僕の魔力だった……だけど段々と僕の魔力を駆逐して別の、禍々しい魔力が吹き出してくる。


「よし。アルミス。ここらへん一体の空間はちゃんと隔離しているから。何をしても表にはバレないよ……」


「お、おう!……なんかぬるっと始まって若干困惑しているけど……任せてちょうだい」

 

 宝玉から漏れ出す禍々しい魔力。

 それに対抗するようにアルミスから神秘的で神々しい魔力が吹き出す。

 

 宝玉から溢れ出す黒い魔力とアルミスが吹き出す白い魔力がぶつかり合って互い医に侵食し合う。

 

 そして────黒と白の魔力が最高頂点へと達した時。

 

 空間が歪む。


「おぉ……」

 

 そこに現れるは伝説上の存在である悪魔と天使。


「この姿になるのは久しぶりね」

 

 肩まで伸びた黄金の髪と宝石のような翠眼を輝かせた一柱の女性。

 純白な肌に圧倒的なスタイル。

 すべての生命体を魅了するような神秘的で完璧な造形を持ち、その背中には全てを飲み込まんばかりの真っ白な光を放つ巨大な翼が存在している。


「ァ……ァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 腰まで伸びた黄金の髪と宝石のような翠眼を輝かせた一柱の女性。

 純黒な肌に圧倒的なスタイル。

 すべての生命体を魅了するような神秘的で完璧な造形を持ち、その背中には全てを飲み込まんばかりの真っ黒な光を放つ巨大な翼が存在している。

 

 白と黒。

 相反する二柱の存在がそこに顕現した。


「ふふふ。少しはこの姿を見て見惚れてくれたかしら?」

 

 アルミスが僕へと色っぽく流し目を送ってくる。普通の感性を持った人間であればそれだけで魅了されてしまうだろう。


「いや。全く」


 しかし、普通の感性など持ち合わせていない僕が魅了されることはない。

 ヤレない女に価値はない。


「あれぇ!?」

 

 それに対してアルミスが情けない声を上げる。


「そっちの悪魔は任せるよ」


「えぇ。任せてもらって構わないわ……ん?そっち?」


「ん?あぁ。そう。悪魔は一柱だけじゃなくてもう一柱いるから」


「へ?」


 アルミスが男の時のようなアホ面を晒す。

 見た目は神々しくなっても中身はこれっぽちも神々しくなっていないようだ。 


「よっと」

 

 僕は宝玉をもう一つ取り出して、アルミスへと見せる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 それを見たアルミスが驚愕の声を上げた。

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