第3話

「ふむ……」

 

 僕は一言呟き……空間が歪んでいくのを眺める。


「あっ……」

 

 そして……空間が裂け、一人の女性がそこから落ちてくる。


「んにゅ?な、なんですか!?」

 

 落ちてきた場所がミリアのすぐ近くだったこともあり、ミリアが驚き慌ててその場から離れる。

 落ちてきた女性。

 女性の体には傷が多く、ボロボロである。……気を失っているようで、なんかもう死体である。


「……ッ!?ま、ぞく……?」

 

 生徒会長が表情を強張らせ、臨戦態勢に入る。

 その表情には冷や汗が流れ、動揺の色に染まっている。

 

「ただの魔族では……ッ!!!ま、さか……そんなわけ」

 

 信じられないと言わんばかりの表情を浮かべながらミリアは体を震わせる。


「ふふふ……そのまさかだよ」

 

 僕は不敵な笑みを浮かべて、

 流石に生徒会長なら気づくよね。

 

 褐色の肌に、抜群のスタイル。

 頭から生える巨大な角、背中から生える巨大な翼。

 きれいな銀髪を持った女性。

 

 そう。

 この場に現れたのは魔王、その人である。

 魔王が体をボロボロにして、僕らの前に姿を表した……異常事態という他ないだろう。

 異常事態!異常事態!異常事態!

 ……なるほど。なるほど。なるほど。

 んー。最悪のパターンが来たかも知れない。……いやぁ……そうか。そっちのルートに進むのか……。

 予想はしていたけど……ゲームの方ではその気配のけの字もなかったから無いと思っていたんだけど……まじかぁ……。


「よっと」

 

 僕は魔王のことを抱きかかえる。


「よっこいしょ」

 

 さっきまで座らせていたソファに魔王を寝かす。


「……ミリア。毛布でも持ってこさせて。かけてあげないと」


「承知致しました」

 

 僕の言葉にミリアが頷き、生徒会室から退室していく。

 

「だ、大丈夫なの……?」

 

 生徒会長が警戒し、心配そうに告げる。


「大丈夫だよ。……魔王程度なら僕が余裕で殺せるから」


「なら安心ね!」

 

 僕の言葉を聞いた生徒会長が安堵し、ソファに腰掛けてくつろぎ始めた。


「ちゃんと私のことを守ってね?」


「君が僕の計画の障害物とならない限りは良いよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る