第34話
「1番です」
街をぶらぶらと特に用事もなく歩いていた僕の隣を通り過ぎていったカレアが、通りすがりにぼそっと僕に呟いてきた。
……なるほどね。
僕は行き先を決定し、足を速めた。
■■■■■
さっきまで歩いていた大通りから抜け、僕は裏路地の方を歩いていく。
柄の悪い男が増えてきたので、絡まれないように気配を消して進む。
そして、僕は目的地にたどり着く。
スラム街一歩手前と言って良いような裏路地に立っている一つのボロボロのお店。
僕はその中に入る。
「っらしゃい」
店の中にいたマスターと思われるイカついおっちゃんがボソリと呟く。
僕の気配絶ちは完璧だ。
目の前のマスターのおっちゃん程度で見破れるような気配絶ちをしていない。
マスターのおっちゃんには人知れず勝手に扉が開いた心霊現象に見えるはずだが……それでも動じた様子は見せない。
「……ッ!?」
テーブルの上に置いた小さな札を見て無表情なマスターのおっちゃんの表情に驚愕の色が映る。
「……二番だ」
その後すぐに表情を消したマスターのおっちゃんはボソリと呟く。
それを聞いた僕は二番と書かれた木札が置いてあるテーブルの方へと向かい、椅子へと座った。
それからしばらく。
しばらくの間待っていると、店の中に一人の男が入ってくる。
お世辞にも身なりが良いとは思えない男は迷わず二番のテーブル、僕の向かいの席に腰を下ろした。
「君が依頼主か?」
空間魔法で仮面を取り出し被った僕は一言だけ告げる。
「……ッ!?」
それに対して僕の向かいの席に座った男は驚愕の表情を浮かべる。
まぁ……当然だろう。
いきなり何もなかったところに仮面が浮かび上がったように見えているだろうから。
「そうだ……」
男はすぐさま表情を切り替え、テーブルの上に封筒に入った紙と虹色に光る硬貨を5つほど置く。
「了承した。確実な成功を届けよう」
封筒と硬貨を空間魔法で仕舞う。
そして、そのまま仮面も空間魔法で消す。
「……っ」
それに対して男は再び驚愕し、小さな声を漏らした。……まぁ、これでも我慢したほうだろう。
彼にはいきなり仮面が現れ、消えたようにしか見えていないだろう。
全く。酷い怪奇現象だ。
僕は音一つ立てず席を立つ。
そして、二番テーブルを覆っている結界の外へと出る。
テーブルの周りには色々なものを隠す結界が張られているのだ。
僕は短距離空間転移魔法を発動させ、ボロボロのお店の外へと出る。
そして、カレアが待っているであろう場所に向かって移動を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます