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文化祭、コスプレカフェに向けての作業が始まった。
もちろん男たちも騎士や勇者といった装いをする。当然、俺はそれぞれの特性に合わせて口を出す。
「どうだ、この勇者の剣! いいだろアレン!」
「確かに似合って――」
「おいササミ、お前は上半身裸でいい」
「え、な、なんでだ!? 普段と違うのがいいっていってただろ!?」
「お約束もあるんだ。考えろ。――アレン、お前は剣を持ってろ」
「え? わ、わかった」
ったく、外していいところとダメな所も分からない奴らめ。
教室の机は取っ払って、手作りで装飾品を作っていた。
これだけ見ると、何らただの学生と変わりない。
いや、違うな。
ただの学生か。俺が、特別に捉えすぎている。こいつらにとっては、これが普通だ。
下級生のときと違って仲の良い男女もいる。
この行事は俺にとっては通過点。
けど、こいつらにとっては大事なことか。
……ったく。
「ルナ」
「は、はい!?」
すると、カーテンの近くで突っ立ってる小柄な黒髪がいた。
シンティアとリリスとは随分打ち解けているみたいだが、まだまだ他の奴らとは距離がある。
彼女のおかげでココの出し抜けたのだ。もっと胸を張ってほしいが、性格ってのはそう簡単に変わらないだろう。
ちなみにコスプレは俺の独断と偏見で、シスターとなった。
奥ゆかしさだが、中身は――。
「ハァハァ、ヴァイスくんか、かわいい……」
変態だからだ。まあこの辺りも鉄板だろう。
ちなみに俺は今、シンティアの要望で猫耳をつけられていた。
これは仮だが、ギャップが良いそうだ。
よくわからない。俺は元からカワイイはずだ。
っと、それより――。
「カルタ、セシル」
「どうしたの?」
「はい?」
「ルナに仕事を割り振ってあげてくれ。今回は照明にこだわるつもりだ。彼女の黒球を使ってな。それも計算にいれてほしい」
「え!? 黒球を!?」
「教室の中だけだ。手作りしてもいいんだが、できればお願いしたい。いいか?」
「……もちろん。わかりました」
こくんと頷くルナ。
彼女とはまだまだ話したいことが山ほどあるな。
二人なら任せられるだろう。
シンティアとリリスは先導して教室の改造案を練っていた。オリンはやっぱり女装になる。本人はなんで? という顔をしていた。
それぞれが順調だ。通常の授業もあるので、放課後はこの光景が続くだろう。
教室を出て、深呼吸する。
俺には向きわなければならない課題がある。
コスプレカフェを一位にする為に、確実に必要なものだ。
……これほど恐ろしい言葉があるだろうか。
だが、これは目玉だ。
成功すれば勝利は確信したといってもいいだろう。
ノブレスには、当然だが職員室がある。
といっても、教員たちのやることは通常の授業だけではなく、闘技場の整備、特殊な魔法試験の準備、性能のテストがある。
よって、闘技場で何かの魔法テストをしていることはめずらしくない。
俺は、
ミルク先生は、地下で魔法を人形に放っていた。
炎と水が混ざることなく手から放たれ、渦を描きながら対象に向かっていく。
それは、衝撃と共に爆発する。
凄いな……。
これは水蒸気爆発だ。詳しい科学まで理解していなくても、本質的にわかっている。
このセンスが、ミルク先生が最強と呼ばれるゆえんだ。
俺は先生と引き分けた。だがそれは、あくまでも祠への意識を割かせた上で、短期決戦での勝負だった。
いつか本気の勝負がしたい。
それは、きっと先生も思ってくれているはずだ。
「何か用か、ヴァイス」
気配を消していたはずの俺に気づいていたらしい。
このあたりもさすがだ。
そして俺の心臓は震えていた。
多分、いつもの五倍、いや、十倍だ。
「ここここ、こんにちは」
「どうした? 震えてないか?」
「……気のせいかと」
落ち着け。俺は何度も死線を乗り越えてきた。
俺なやられる。
――なあそうだろ。ヴァイス。お前ならやれるだろ?
なあ、答えろよ。
「何を隠してるんだ?」
俺は、後ろに持っていたものがある。それにまで気づいていたのだろう。
ふたたび深呼吸、そして――さっと取り出す。
コスプレカフェを確実な勝利にするためには、目玉が必要だ。
どれも最高。だが、あれが最高だった、と言わせるのが一番いい。
――そう、それは――。
「ミルク先生、学園祭で、このドレスを着てもらえませんか?」
俺は、ピンク色の鮮やかなドレスを見せた。
これは、王家御用達の素晴らしいものだ。
ファンセント家のコネを使って手に入れた、由緒正しきものでもある。
いつもは男勝りなミルク先生が、ドレスで現れる。
こんなの、ノブレス魔法学園の連中なら喉から手が出るほど見たいはずだ。
いや、例え生涯魔法が使えなくてもいい、と思う奴も出るかもしれない。
だが、簡単に了承するわけがない。
だからこそ何か勝負を仕掛ける。
そして、必ず――。
「別に構わないぞ」
「……え? い、いいんですか?」
「行事ごとに参加するのは教員の務めだからな」
そ、そうか! ミルク先生はこうみえてプロだ。
なるほど、さすがだ。
これは勝利間違いない。
間違いないぞ。
すると、その後ろで俺はみた。
エヴァが、メイド服みたいなものを手に持っていることに。
そして、微笑んできた。
その後ろでは、エレノア、シエラ、そしてプリシラもメイド服を手にしている。
そ、そんな……バナナ。まさか、メイドカフェをするのか?
こんなの原作にはない。
そうか、俺が改変したのか。
このままでは負ける――いや、まだあきらめるな
何か、何か手は――。
「ミルク先生、前半と後半で衣装を替えもいいですか?」
「いいだろう」
よし、絶対に勝ってやる。
一位を取ってやる。
しかし、エヴァのメイド服……か。
途中で抜け出しありだったか?
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