325 大群(カルタside)

 荒野は思ってた以上に広く、砂埃で溢れている。

 魔力で位置を特定することはできるけれど、視認することができないのは誤算だ。


「……凄い。あれはヴァイスくんとミルク先生……なんて魔力のぶつけ合い」


 ついさっき、セシルさんを通して情報が入ってきた。

 クロエ先生の転移によってシンティアさんたちが飛ばされて、残されたヴァイスくんが一人で戦っている。


 一応事前にマリスさんの存在は聞いていたけれど、きっとヴァイスくんの性格ならまずは手出しをさせないだろう。


 私ならすぐ飛んでいける。でも、それはダメだ。


 足手まといなのはもちろんわかっている。でもそれだけじゃない。


 ヴァイスくんとミルク先生は、特別だから。


 ……邪魔はしたくない。


 そのとき、私は前方から現れた魔力の存在に気づく。


 セシルさんの予想通りだ。まさか、ここまでするとは。


『前方から来たよ。オリンさんは既に待機してる』


『やっぱりね。ありがとうカルタさん。良ければ、そのまま前線で活躍をお願い。ベルクくんとメリルさんも地上で戦ってもらうわ』


 下を見下ろすと、オリンさんが最前線で両手を光らせていた。

 その後ろにはトゥーラさんと同級生。


 やがて地鳴りが響く。


 この試験の前に、私たちは誓約書にサインした。


 要約するとこうだ――死んでも、文句を言わない。


『――北の祠はアレン隊が継続。南はヴァイスくん、東と西は――ここからが本番よ』


 セシルさんの声をかき消すほどの地鳴りが聞こえてくる。

 それは――魔物の大群だ。


「……だからここを選んだのか」


 この世界に魔物は多く存在する。

 生息地はダンジョン、森、海、山と様々だけれど、個体の中には群れを基本として動くものがいる。


 断続的に鳴り響く足音。前方から現れたのは、横一列に並んだ巨大で、かつ群れをなしたミノタウロスだった。

 縄張り意識が強く、攻撃力、防御力に優れている。

 魔法はそれほどでもないものの、知能が通常魔物と比べて高い。


 祠の周りには、魔物避けの魔術と、魔物寄せの魔術が付与されていた。


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