188 オークション解決編②

 だが驚いたことに、俺を迎えに来たのは父、アゲートだった。


「どうしてここに……」

「私はお前の父だからな」


 仕事で忙しいはずの父が、俺を迎えに来てくれたのだ。

 それどころか、全てを終わらせてくれていた。


「ソフィア姫に感謝しておけよ」

「え? どういう――」

「お前を助ける為に随分と無茶したとのことだ。まあ、私も大変だったがな」


 それを聞いて俺は申し訳なくなった。

 ソフィアがまさかそこまで気にかけてくれていたとは。


 ……今度、お礼の手紙でも送るか。


「すみません……」

「ふ、気にするな。――さすがは俺の息子だ。」


 そういって父は俺の頭を撫でた。


 後から知ったことだが、父は政界で顔が利くほどに出世していたらしい。

 敵を作っても構わない心を持っているのは、俺と同じなのだろう。


 俺が捕まったことを知るや、脱税、亜人の違法な捕縛、無申告の商売といったありとあらゆる方向で攻め立てたらしい。

 その証拠は数日で集めたとは思えないほどの資料だったとのこと。

 そこにソフィア姫。


 聞けば、ミルク先生すらもそれに関わっていたとか。


 冒険者をやっていたコネを最大限に使ったとのことだ。


 後はベルク、メリル、カルタの親はそこに乗っかればいい。

 正当性はこちらにあることが証明された後は、正しい方向で権力者たちを捌く。


 とはいえこれは俺たちを解放するだけにしかならない。

 今回の件で権力者たちが投獄されるなんてありえないからだ。


 しかし――。


「ふう、疲れたっす」

「ベルク、まあちょっとは強くなってたわよ」


 疲れ果てた二人が、俺たちの椅子の前に座る。


「で、お前たち本当なのか?」

「うっす。全部は変えれないっすけど、できることはいしたので」

「元々良くないとは思ってました。でも、ただ流されてた。これは、いいきっかけだと思います」


 二人はノブレスを卒業後、王都での奴隷商売の撤廃を進めていくらしい。

 国が違えば法律も違う。この一つを変えるだけでも一苦労だが、それでも意思は固いらしい。


 だが俺は知っている。


 原作ではアレンのおかげで国民の意識が変わっていくことを。

 とはいえそれは随分と後半だ。


 奴隷がなくなっていくかもしれないとぼやかされるだけで、真実はわからない。

 

 しかしベルクとメリルならいつか叶えられるかもしれない。


 ま、俺もハッピーエンドは嫌いじゃないしなァ。

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