226 百聞は一見に如かず

「奴隷紋でプリシラの感情は抑制されていると思うか?」

「可能性としては著しく高いと思う。元々は反抗的な態度を取った際に付けるものだけど、プリシラさんはとても戦闘能力が高いでしょ? 過去に何かあって付けたと考えるのが自然なんじゃないかな。それに彼女の成績を考慮しても」

「ああ、今だにプリシラは公式試験で無敗・・だからな」


 三学年の公式試験で今だ無敗なのはニールとプリシラだけだ。

 エヴァはたまに自分から負けに行く時もある。

 しかしポイントではエヴァのが上だ。なぜなら、ニールはずっと学校をさぼっていた。


「それと、これはまだ噂程度だけど……」

「なんだ?」

「アルバート家は、いえ、おそらくニールさんは法を変えようとしている動きがあるらしいわ。それも奴隷についての」

「……法を?」

「多くの国で奴隷は存在してるけれど、ほとんどが非合法。だけど彼は、世界的に合法化しようとしているみたい。大量に買い付けていると時に漏らしていたらしいわ。これは私の勝手な予想だけど、もしその法案が決まれば彼は世界一の金持ちになるでしょうね。そして奴隷を多く従えることになる」


 ……そうなると最悪だな。

 奴隷紋に躊躇のないニール、奴隷が合法化すると大勢の兵隊が出来上がる。


 ……そういうことか。


「色々と読めてきた。いつも悪いなセシル」

「ほんとね。でも、百聞は一見に如かず、どうせなら敵情視察にきましょ」

「どういうことだ?」

「先に――」


 セシルは、盤面・・に視線を向けた。

 さっきから永遠と戦っているが一度も勝てない。


 で、今はもう打つ手がない。


「負けました」

「ふふふ、ありがとうございました」


 頭をペコリ。


 俺はまだセシルに勝つことを諦めていない。

 だから時間を作ってはバトル・ユニバースの研究をしている。

 夏休みエスタームの最終日には、エドニア地方に住むサブエピソードである無敗バトユニおじさんにも勝利したのだ。


『ヴァイスといったが、お主には免許皆伝を与える』


 とにかく強かった。激戦だった。


 なのになんでまだ、まだ勝てないんだ……。


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