193 反省
彼女の言葉の一つ一つが突き刺さる。
何も考えていなかったのだろう。
自分のことしか頭になかった。
言わない方がシンティアの為になると本当に思っていた。
肝心な時はいつも彼女に頼りっぱなしだというのに。
「……そんなことはない。俺が悪かった――」
シンティアは俺に駆け寄り、強く強く抱きしめてくれた。
身体の震えがよくわかる。
「すまない……」
「次は……ないですから……」
「ああ……」
静かに涙を流しながら、シンティアはそれ以上、俺を責めることはなかった。
おそるおそるリリスに視線を向けると、同じ気持ちですから、と心で伝わった。
……ったく、俺は本当にバカだな。
「シンティアさん。本当にごめんなさい。私も……」
「カルタさんは悪くありません。助けてくださったと聞いています。感謝していますわ」
そのとき、後ろのリリスが、ハンカチを取り出せと俺に強くジェスチャーした。
急いでポケットから取り出して手渡す。
「ごめんな」
「……大丈夫ですよ。すみません、久しぶりでこんなことを言ってしまい。――カルタさん、改めてご夕食のお誘いありがとうございます」
「い、いえ!? ど、どうぞ! リリスさんも、シンティアさんも!」
「ありがとうございます! ヴァイス様、私も怒ってますからね!」
「ああ、悪い……リリス」
「いえ、ヴァイス様のめずらしいシーンも見れたので許しておきます」
リリスの言葉に、シンティアがようやくふふふと笑う。
本当に二人には助けられっぱなしだ。
そしてそのまま屋敷に戻ろうとすると――。
「それで、先ほどは何を言いかけていたのですか?」
「何でもないです」
「隠し事ですか?」
「……え、ええと……」
正解がわからねえ。どうしたらいいんだ……。
「冗談ですよ。ほら、ヴァイスいきましょう」
「……ありがとな」
そしてその横で、カルタが『……いいなあ』と呟いている気がした。
しかし今回ばかりは深く反省するしかない。
……お前ならもっとうまくやれたんだろうな。
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