291 ミルク先生の動向

 僕たちは今よりもっと先生の事を知ることになった。

 一番知っているのはダリウス先生だ。

 僕の第二の師であり、シャリーも親交がある。


 しかしそれだと視えないものがあるかもしれない。

 ということで、僕たちはあえて、ミルク・アビタス先生を観察していた。


 今は放課後、授業を終えた先生は専用の寮に戻るか、各々の時間を過ごす。

 しかしミルク先生は、まだ一人、教室に残ってノートに何を書いていた。


「一体何を書いてるんだろうな。生徒の筋肉量か?」

「デュークのノートには書いてそうだね」

「二人とも真面目に観察しなさいよ。この試験は、準備期間が重要ってセシルさんも言ってたし」


 シャリーにお叱りを受けながら、飛行魔法を使って、窓からのぞき込んでいた。

 しかし――。


「ね、ねえ、重たいんだけど……デューク、飛べないの?」

「俺はそういうの苦手なんだ。知ってるだろ」

「……で、なんでシャリーも」

「ついでよ。軽いし、いいでしょ」

「いやそこまで軽くはない――って、痛っ!?」

「乙女にそんな失礼なこと言わないでよ!」


 シャリーに頭を叩かれてしまって、飛行魔法が解除されそうになる。

 慌てて立ちなおそうとするが、窓ガラスが突然に開く。


「最近の鳥はよく喋るんだな。――観察は結構だが、人が仕事をしている時は静かにしろ」


 ヴァイスでさえも逆らうことができない先生が、僕たちを見ていた。

 えへへとデュークが笑って、体勢が崩れてしまう。

 慌てて落ちそうになったところを、ミルク先生が片手で掴み、僕たちをポイポイと教室に投げ入れた。


 魔力も使っていないのに凄すぎる。

 しかし、壁に叩きつけられないよう反転して着地する。


「危なかった……ありがとうございます。ミルク先生」

「ったく。お前たちの魂胆はわかってるが、時と場所を考えろ」


 デュークとシャリーも丁寧に謝罪し、その場を後にしようとするが、「ちょっとそこで待ってろ」と言われた。

 三人で顔を見合わせながら椅子に座って待っていると、少ししてミルク先生が「終わった」と立ち上がる。

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