290 純白の二人目

 しかし、攻撃は通らなかった。


「……化け物ですか?」

「ふっふーん、惜しいね」


 全ての防御シールドを破壊したが、触れることができなかった。

 なぜなら、ココは水魔法の防御で身体を覆っていたのだ。


 これは、ミルク先生も使う技だ。

 しかもココは防御と合わせている。


 たとえるなら絶対防御の重ねがけか。

 それも水魔法のほうが強度は高いだろう。


「はい、残念無念また来週ーまだまだねーお子ちゃまたち」


 ちょっとだけ意地悪そうに言うところは、いかにもココらしいな。

 絶対にムカつかないが。別に。別にな。


 ……ちょっとだけムカつくが。


 いや、それより――。


「しかし、わかりましたよ」

「ほう?」

 

 ココは試合前に弱点が知りたい? と言ってきた。

 驚いたが、それがわかったのだ。


「もしかしてですが」

「何だ?」

「……心臓ですか?」


 俺の言葉に、ココが微笑んだ。


「そこまでわかるとはな。シンティアのおかげかな?」

「多少は。心音で気づきました」


 ルナが近づいてくると、「どういうことですか?」と尋ねた。


「面白いものを見せてくれたからね。教えてあげるよ。――私はね、身体が弱いんだよ」

「……弱い、ですか?」

「生まれつき体力がないんだ。心臓が弱くてね。外でしっかりと太陽を浴びていいのは、一時間にも満たない。普段は紫外線から身体を守る為に防御を展開してる。これはね、私の防衛本能が生み出した結果なんだよ」


 ココは汗をかいていた。

 一歩も動いていないにもかかわらず、かなりの体力を消耗していたのだろう。


 魔力量と体力は違う。おそらくかなりの負担が身体にかかっていた。


「ココ先生、その身体で試験なんて出ても大丈夫なんですか?」

「有望な生徒たちの為だからねえ。それに、私のことはミルク先生たちは知ってるよ。助けてくれるんじゃないかな」


 彼女が攻撃魔法を一切放たないのは、そういうことだったのか。

 無駄な攻撃で体力を消耗したくない。いや、できないのかもしれない。


「きっと私は教師の中でも一番弱いよ。でもね、私にしかできないこともある。今回は、それを伝えらたら嬉しいかな。それに、私みたいなおばさんの下着で喜んでくれる人や、あなた達みたいに青春を楽しでる人がいるなら、疲れるけど教員も悪くないよ」


 冗談交じりに笑いながら純白をぶち込まれる。

 なんて返事したらいいかわからない。しかしココはいいやつだ。


「すみません、私たち、突然こんな……」

「いいよいいよ。おもしろかったからね。今日は疲れたから休むかな。ただ一ついっておく。私は弱いけど弱くない。ちゃんと全力でかかってきてね」

「……承知してますよ」

「ふふふ、それじゃあねルナちゃん、ヴァイスくん。保健室はサボるところだから、たまには魔力休めにおいで」


 原作では知らなかったことが、一つ一つ明らかになる。

 この気持ちは、いつまでたっても慣れない。


 魔族大規模侵攻でココはかなりの魔力を消費し、動きまわったはず。

 ……この世界の住人はほんとうに――。


「いい人なんですね。私、ココ先生が大好きになりました」

「……かもな」


 しかし多くの情報を得た。これでより、試験に勝てるだろう。

 ふとルナに視線を向けると、とんでもないことをしていた。


「お前、何してんだ……?」


 スカートをたくし上げ、下着を確認していたのだ。


「ピンクだった……今度、純白にしてきます!」


 そんな情報は、アップデートすんな。


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