289 無敵の防御

 続いてルナは、黒い塊から魔力砲を放とうとした。

 普通なら防御されるだろう。


 だがそこに俺が、癒しの加護と破壊の衝動でルナに魔力を明け渡す。

 力を得た彼女の力が伝わり、強い魔力砲が放たれる。


 同時に閃光タイムラプスで防御を切り裂く。


 二重の極み。これで――どうだ!


「ほう、おもしろいな」


 防御術式が切り刻んでいく

 防御の天才であっても、魔法は魔法だ。


 続けて間髪入れずに攻撃を仕掛ける。

 だがそこで――とんでもないものを見た。


「たったの一枚・・にそれだけの魔力量をかけて、今後が持つかどうか心配だな」


 バリンと響いて現れたのは、二枚目の防御エフェクト。

 これだけ丁寧な術式を重ねがけ?


 いや、違う――。


「ザッと十枚だ。それに今、新しく増やした。さあ、どう攻略する?」


 ルナが、後ろで「こんなの……」と囁いた。


 ハッ、これがノブレス・オブリージュ最強の防御シールドを持つ女性か。


 ……って、弱点どこだよ。


 俺が後ろに一旦引くと、ルナが近づいてきて、静かに囁いた。


「どうしたらいいのかな、ヴァイ君」

「……ルナ、お前ならあの防御をどう破壊する?」


 彼女の発想力は俺にはなく、セシルともまた違うものだ。

 それを聞いてみたかった。


 彼女は少し考えて、おもしろいことを言い放った。


 ハッ、さすがだ。


「それを試してみよう」

「……いいんですか?」

「ああ、おもしろいからな」


 ふたたび駆けると、ココ先生は笑っていた。

 基本的に彼女は相手の出方を見るタイプだ。


 ルナの作戦通り――閃光タイムラプスで切り刻む――のではなく、一点特化、すべての魔力を乗せて刺殺。

 バリアを次々と突破していくが、流石ココだ。


 一部が欠けるだけで、すべてが破壊されない。

 展開している円の防御の一部が欠けただけだ。


 だが一枚二枚、三枚、やがて八枚目に辿り着くも、そこで止まる。


「一点に集中ね。おもしろいけど、おしいかったね」

「いや、ここからですよ。――ルナ!」


 次の瞬間、剣の先端に付与されていた黒い塊が、突然に伸びる。

 俺の闇と合わせて、防御を突き破っていく。

 

 先端に塊を付着させ、それを動かしたのだ。

 

 ルナ本体の動きが止まってしまうものの、虚を突くのにペアの相手としてこれほど上出来な相手もいないだろう。


 必ず、一撃を与えてやる――。


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