292 弱点

 一体ノートに何を書いていたんだろうか。

 凄く気になるけど、怒られそうで聞けない。


「何書いてたんすか? 先生!」


 と、思っていたら、デュークが声を上げた。

 こういうときのは頼りになる。


 でも、いつもなら「黙れ」と言われそうだ。

 それでもめげないところは見習いたい。


 しかし、ミルク先生はふうとため息を吐いたあと、いつもとは違う優しい表情を浮かべた。


「次の授業のまとめだ。お前たちは強すぎるからな。私たちも常日頃勉強しておかないと、教えることができなくなる」


 失礼かもしれないが、正直驚いた。

 ミルク先生が、僕たちを強いだなんて思ってくれているなんて。


「着いて来い」


 すると、そこでミルク先生が僕たちに声をかけ、歩きはじめた。

 三人で顔を見合わせると、急いで向かう。


「行きます! よくわかりませんが!」

「アレン? 行かないの?」

「行く」


 一体、何をしてくれるんだろうか。


 廊下を突き進んでいくと、辿り着いた先は、ノブレスの広い屋上だった。

 普段は立ち入り禁止だ。


 市街地と違って新鮮な景色が広がっている。


「おおー、上から学生を見下ろすのは気持ちいいな」

「デュークって権力を持つと面倒なタイプそうね」

「もちろん、法律に筋肉は入れるだろうな」

「何の話……?」


 デュークとシャリーのいつものやり取りに微笑んでいると、ミルク先生が消えていた。

 慌てて周囲を見渡すが、突然、背後から声がする。


「油断するなよ」


 次の瞬間、トンッと首に手を置かれた。


「……ええと、先生?」

「アレン、デューク、シャリー。悪いが一つ言っておく。――私は、今のお前たちには絶対に負けないだろう」


 その言葉に、心臓がドクンと鳴った。

 ミルク先生はいつも真剣だ。軽い冗談を言うときもあるが、表情を確認したが、笑みはこぼしていない。


 ―――――――――――――――

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