255 懇願
市街地B。
放課後、建物内で魔力が高速で動いている。
「シンティア、リリス、来るぞ」
「はい」
「わかりました」
次の瞬間、窓を突き破って現れたのは、アレンだ。
以前と違って動きの予測が殆どできなくなっている。
エヴァの見えない手を使って直角に動いたりするようになったのだ。
魔眼を使ってもいいが、それがなければ勝てないようになっては困る。
真正面から駆けてくるも、同タイミングで左右からシャリーとデュークが現れた。
連携技も以前より上がっている。
「オラッアア!」
「取るわよ。今回は!」
だがそれはこちらもだ。
シンティアとリリスが瞬時に対応。
俺とアレンは、左右に視線を向けることはない。
「――
まずはあいさつ代わりだ。
アレンは身体をひねりながら回避、飛行魔法を使ってタイミングをずらし、思い切り剣を振り下ろしてきた。
いつもなら受け止める。
だが俺は――あえて避けない選択をした。
その直後、額の上で
肉を切らせて骨を断つ。
ニールやプリシラが行っていた技を自分のものにしようとしているのだ。
そのまま剣を突き出すも、驚いたことにアレンは無詠唱で
これは、ココの技だ。
「ハッ、日に日に猿真似がうまくなるじゃないか!」
「いつまでも余裕があると思うと大間違いだ、ヴァイス!!!」
アレンの魔力は以前の比じゃない。
ありえないほどの研鑽を積んでいるのだろう。
尋常じゃない成長速度だ。
エヴァとの手ほどきで何かを掴んだのかもしれない。
それでも、俺は負けない。
「――黙ってろアレン!」
手加減一切なしの近距離攻撃。
そのままぶち込んでやろうと思っていた――その時。
『みんな、一旦中断。――ファンセントくん、古代魔法具の所在を探してる連中、見つけたわよ』
どこからともなくセシルの声がした。
上を見上げると、建物の上に立っていた。
全員が魔力を止めて、その場で立ち尽くす。
「……古代魔法具?」
デュークがそこそこ大きい声で呟いた。
なぜあいつらにも? ああ、なるほど……セシルめ。
全員の顔が俺に向き、眉をひそめた。
俺だけでやるつもりではあったが、この
まったくノブレスめ、やはり強制力か?
今は上級生や下級生が交流会でノブレスにいない。
ミルク先生もだ。
そして特に、シンティアがじとーっとした目で睨んでいた。
もちろん伝える予定だったが、少し遅れたのだ。
彼女は、できるだけ安全策を取ろうといっていた。
それに今ここでコソコソとすることもできないだろう。
セシル、これも計算してたか?
……ふう。
「ちょ……ちょっとだけ手伝ってくれるか……お前ら」
俺の言葉の後、全員が頬を緩めた。
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