272 もう一段階
「デビビ!」
屋上、昼休み。
久しぶりに一人で昼食をとっていた。
ノブレスの食堂では、サンドイッチや外で食べられるようなコンパクトタイプのお弁当も用意してくれる。
ハムとチーズ、肉をふんだんに使った柔らかいパンを食べながら、デビを自由にしていた。
空の上、ぶんぶんと鞭と闇剣を振り回しているのを見ると、ほんの少しだが親心を言うものが……いや何でもない。
デビは汗をかかないが、少し疲れた風に翼をパタパタをはためかせて降りて来ると、おでこをぬぐって俺のふとももに頭をくっつけた。
それから上目遣い。これが、基本セットだ。
「デ、デビ……」
「……ああ、いつも偉いな」
「デビビ♪」
ひょんなとこから使役したデビだが、もはや俺の攻撃で一番大事な役割を担っている。
それを一番感じたのは、エヴァの裏をかいたときだ。
体育祭、彼女はデビの存在に気づかなかった。
もちろんそれを指示したのは俺だ。
今までの努力が実ったと言えばそれまでだが、ある種の疑問を抱いていた。
「デビビ?」
デビはもしかすると、この世界の中で最もイレギュラーな存在なのではないかと。
この世界は現実だ。しかしデビだけは異質。
存在しないはずの使役。闇の生き物。
そしてそれを更に強くすることができれば、魔王にすら裏をかけるんじゃないかと。
「デビ、お前は強くなりたいか?」
こいつは確かな意思を持っている。
俺が主人にもかかわらず、確かな意思を。
すると姿勢を正して敬礼した。
「デビビ!」
それをもう一段階引きあげることができれば、更に強くなることができる。
そしてそれを可能にする鍵は、ルナ・キャンディ、彼女ただ一人。
「……ふん、ふーんふん」
すると、原作通りに彼女が鼻歌を歌っていた。
屋上からデビと静かにのぞき込む。
そこには、両手に小さな黒い塊を載せたルナがいた。
しかしそれは形を変え、翼を持つペガサスに変わる。
それがパタパタ飛んでいくと、次は竜になった。
彼女は非常に稀有な特殊能力を持つ。
闇魔法に近いが、それとは違う、シンティアの氷のような属性に囚われないものだ。
――
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