300 勝とう。
地下闘技場に移動した後、更衣室で訓練服に着替えていたら、カルタさんが上着を着替えている途中で悶えている。
「んっ、胸がき、きつい……」
「カルタ、また大きくなってないか?」
「ひゃっああん、トゥ、トゥーラさんダメだって!?」
「なぜだ? 減るものじゃないだろう。おお、柔らかいな!」
「んっあぁっ……あっ……や、やめ……」
ちなみにトゥーラさんもカルタさんに負けず劣らず、たゆんっとしている。
……うらやましい。
シンティアさんもだし、もしかしてファンセントくんも好きなのかな。
……って何考えてんだろ。
そんな気持ちのまま外に出ると、すぐに気持ちが切り替わった。
ダリウス先生の良いところは、どんなことにも一生懸命なところだ。
真摯に対応してくてくれる。
闘技場で、静かに座禅を組んでいた。
魔力を練っているのだろう。
ココ先生の魔力量はノブレスで一番だと言われているが、ダリウス先生もそれに劣らない。
いや、力強さで言えば遥かにココ先生をしのぐ。
私はよく、戦闘能力を分類、数値化する。
趣味や趣向、癖や能力でパターンを作り、最適解を選択。
けれどもダリウス先生は、そんなことをあざ笑うかのような力を持っているはず。
以前、ファンセントくんとアレンくんが竜と対面したとき、ダリウス先生は一撃で竜の防御抵抗力を貫通させるほどの一撃を放ったらしい。
普通の防御なんて、先生にとってはないに等しいだろう。
準備ができて前に立つと、ダリウス先生が立ち上がった。
いつもより大きく感じる。
授業で何度か戦っているはみたことがあるけれど、対面したことはない。
「カルタには悪いが、ここであまり飛行魔法は使えないな。その分、攻撃に魔力を割いてくれ」
「は、はい!」
カルタさんの飛行魔法が使えないのは仕方ないけれど、こればかりは仕方がない。
いつものアドバンテージがない分、正面から戦う術を勉強できるのも良いことだ。
私は深呼吸してから、いつも通りに能力を発動させた。
『トゥーラさん、前衛をお願いしていいかな? 一番の負担なんだけれど』
『もちろんだ。初手から全力でいこう』
『カルタさんは遠距離から攻撃を仕掛け続けてほしい。私はトゥーラさんの後ろを追従して隙を伺う』
『わかった』
さっきまで笑い合っていたのが嘘みたいに、二人とも真剣な表情を浮かべていた。
ふふふ、さすがノブレス魔法学園の生徒だ。
私は真剣勝負が好きだ。
バトル・ユニバースをする前の緊張感、もちろん楽しさはあるけれど、勝敗を決する瞬間が一番好きだ。
「よし、いつでもかかって来い。手加減はするが、気絶したら半日は目覚めないかもな」
ダリウス先生の言葉で、心臓がドクンと揺れる。
私は弱い。それはわかっている。
だけど、誰にも負けないと思っているものがある。
あのファンセントくんにだって胸を張って言えること。
死ぬほど――負けるのが大嫌いだということだ。
『――カルタさん、トゥーラさん、勝とう』
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