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 地の刃が、大勢の生徒を無情にも切り裂いた。

 訓練服から魔力が籠れ出ると、そのまま強制転移で消えていく。


 飛ばずに防御をしていた奴らも同じだ。

 生半可な力じゃ防げない攻撃だった。


 地面に降り立ち、次の攻撃に備えるも、魔力は感じられない。


 あくまでも今のは先手、教員からの挨拶代わりみたいなものだろう。


 セシルは悲痛な表情を浮かべていた。

 だが、今のは仕方がない。


 むしろ俺と同じタイミングで彼女は気づいていた。

 まともに訓練をしている奴らなら優に回避できる時間もあった。


 実際、ベルクやメリル、アレンたちも残っているし、中級生の殆どが健在だ。


 魔法鳥が脱落した生徒を読み上げている。

 しかしセシルは気持ちを切り替えたらしく、次々と指示を飛ばしていく。

 カルタは杖に跨って空を飛び、オリンも同じく杖で飛んだ。


 オリンはやはり天才だ。卓越したテイム技術だけに飽き足らず、飛行魔法まで上達している。


「行こう。デューク、シャリー」

「ああ、じゃあなヴァイス、死ぬなよ」

「そうね。危なかったら助けてって叫んでね」

「……黙ってろ」


 相変わらず小うるさい奴らだ。


 まずは四つの祠を見つける。

 それぞれにリーダーを決めて、後ろについていく。


 1チーム目は、アレンを筆頭にデュークとシャリー。

 2チーム目は、カルタを筆頭にオリンとトゥーラ。

 といっても、トゥーラは地走で、残りの奴らもそうだ。


 セシルだけは別だが。


 そして三チーム目は、俺だ。


 ついてくるのは、当たり前だが――。


「ヴァイス様、私はいつでも準備オッケーです!」

「行きましょうかヴァイス。――そして、ルナさん」

「はい。足手まといにならないように頑張りますね」

「なるわけがない。お前は強い」

「……ありがとうございます」


 シンティア、リリス、そしてルナだ。


 まずは北から攻めていく。

 誰が相手でも問答無用でぶっ飛ばす。



 ベルクとメリルを筆頭に下級生が飛び出していく。


 俺は、アレンの後ろ姿を眺めていた。


 奴はニールを倒した。原作を考えるとありえない力強さだ。


 もしあいつが教員を倒せば、それこそ最大の改変だろう。


 しかし今回は俺も負けてられない。


「――行くぞ」


 砂埃がまうも、俺たちは予め用意していたフードに身を包んだ。

 そして、勢いよく飛び出した。

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