316 魔力妨害

 ――中級生、エドル・バーデン脱落。


 ――中級生、ネルギー・エフィス脱落。

 

 ――中級生、オリルール・ギブディア脱落。


 試合が開始してから、既に三十分が経過していた。

 驚いたのは、荒野の広大さだ。


 砂埃も凄まじく、数百メートル先の人影すらも危うい。

 あらかじめ想定はしていたので、全員がベージュ色のフードを被っていた。

 口元を覆いながら、目は魔力で守っている。


「シンティア、リリス、ルナ、大丈夫か?」

「問題ございませんわ」

「大丈夫です!」

「な、なんとかです!」


 ただし魔力を使い続けるのは、相応の集中力が必要だ。

 この視界の悪さだと、祠を見つけるのにもかなり近づかないとダメだろう。


 今もなお、断続的に脱落者のカウントが読み上げられていっている。


 いつもなら観察眼ダークアイで居場所を確認できるが、驚いた事に魔力妨害が砂埃に交じっているのだ。

 おそらくだが、ココが砂の風に乗せているのだろう。まるで電波の悪いラジオ。

 途切れ途切れの魔力が、ノイズのように頭に響く。


 決して高等魔法ではない。だが発想力が段違いだ。


 初めの攻撃もそうだが、すべてが勉強になる。


 この試合を通じて、俺は間違いなく強くなるだろう。

 それも大きく。


 おそらくほとんどの奴らが感じている。


 試験で得られるもの、試合で得られるもの、実践で得られるものは違う。

 しかしこの戦いは、対魔王戦に近いものだ。


 どこにいるかもわからない、どこから攻撃を受けるのかもわからない。

 

 倒した後は、次の仲間の元へ。まったく、ノブレスはおもしろいゲームを考えるものだ。


 そのとき、俺は視界が”何か”で遮られていることに気づく。

 足を止めてシンティアたちに手信号を送る。


「ヴァイス、どうされましたか?」

「前方にデカい岩がある」

「そう……なんですか? 私には見えませんが、ヴァイス様目がいいんですね」

「魔力で視力を向上させているだけだ。これ以上は探知に引っかかる可能性がある。ルナ――」

「はい! ――視てきます」



 ―――――――――――――――


『怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった』

 発売日:2024年3月29日(火)

 (紙本&電子共に予定)

 

 【Amazonリンク&イラスト付き】

 https://twitter.com/Kikuchikaisei/status/1755186344601804896

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る