317 孤高の最強

 ルナは、俺が声をかける前に目を瞑っていた。

 上空に二つの黒球を出現させると、ビュンっと飛ばす。


 そして俺は、ルナの肩に触れた。


 ここからは新しく編み出した魔法連携技だ。

 シンティアから少し冷気を感じたが、気づかないふりをする。


「”共有”させてもらうぞ」

「――はい」



 名付けるならば『視界共有イメージシェア』。


 ルナの魔力と同調することにより、黒球の視界を見ることができる。


 黒球は、まるでドローンのように砂埃をぬっていく。

 習得したては魔力酔いと視界酔いも感じたが、今は何も問題はない。


 ぐんぐんと進んでいくその先から岩を登っていくと、予想は的中。

 

 木板で作られた屋根、その下には、小さな神社のような祠が立っていた。

 流石に防御術式までは視認できないが、情報収集としては十分だ。


 そしてその前に立っていたのは――なんと――。


 ――プツッ。


「……切られましたね」

「想定内だ。再使用までは?」

「二分くらいです。問題ありません」

「シンティア、リリス、喜べ大当たりだ」


 俺の問いかけに、シンティアとリリスは魔力を漲らせた。


 一歩も動かず、ルナの黒球ブラックボールを一撃で破壊したのは。


 俺の師匠。


 ミルク・アビタスだった。



 ふうと息を吐いて気合を入れる。

 ここからは刹那で生死が分かれるだろう。俺の力が通用するのかどうか、確かめるときだ。


「行くぞ。これは試験だ。”連携”でいくぞ」


 相手にとって不足はない。


 俺が、必ず勝つ。


 砂嵐に魔力を混ぜて妨害する方法は、実に理にかなっていた。

 消費も少なく、なおかつ誤魔化しやすい。


 アレンの野郎ならすぐに模倣できるレベルだろう。


 当然、俺もだが。


 突撃する前に、俺は魔力を漲らせた。

 地属性であることの利点と闇魔法を組み合わせて、紛れ込ませる。


 そして更に全員のフードにも同じ魔法を付与した。


「ヴァイス、これは何をしているのですか?」

「俺たちの利点を使う。背格好が似てるってのは強みだ」


 ダリウスを相手にした場合、破壊力の高い攻撃がくると備えるだろう。

 だが俺たちを誰だかわからなくすれば後手に回るしかない。


 先手、そのすべての教えを理解している。

 ミルク先生は一歩も動かず、ただ待っている。


 祠を守るという枷が、彼女を縛っているのだろう。


 真っ向勝負とは言い切れないが、勝てばいい。


「二手に分かれて攻撃を仕掛ける。わかったな?」

 

 全員が頷き、俺たちはバラけた。


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