345 孤高の最強③(ヴァイス)

 正直、俺はありえないと思っていた。

 教師陣は、ノブレスの開発陣がプレイヤーにとって最も困難な相手になる為にプログラムされていた精鋭たちだ。

 確かに人数も試験も有利だった。

 守るべき祠という制限もある。だがそれを加味しても勝つなんてありえない。


 ココは愉悦が弱点なのはわかっているが、それでも最強だ。

 けど、シンティアが上手くやったのだろう。

 彼女はとびきり頭が良い。


 だがセシルには驚きだ。通信を聞く限りでは、たった一人で倒したのだ。


 ……ハッ、楽しみで仕方ねえ。


 あいつともいつかタイマンを張りてえな。


 っと、思考はこれぐらいにしておくか。


「マリス、正々堂々なんて必要ない。お前は祠を狙え」

「承知しました」


 不敵な笑みを浮かべるマリス。

 たゆんたゆんが、思い切りゆれた。


 クソ……心を乱すんじゃねえ。



「作戦は終わりかヴァイス。――いつでもかかって来い」


 癒しの加護と破壊の衝動は既に発動しているが、ミルク先生は独自の対処方法を見つけていた。

 それは、攻撃の瞬間だけ魔力を高めることだ。


 元々の特技と合わせているのだろうが、それにしても差が激しい。

 今は裸も同然で、軽い攻撃を受けても大ダメージを負うだろう。

 

 しかし食らわないという圧倒的な自信が見て取れた。

 だがこれこそが、教師陣の共通の弱点だ。


 どんな人でも、研鑽をつめばそれだけ自信が手に入る。

 ミルク先生は傲慢とはほど遠いだろうが、こればかりは理から逸脱するのは難しいはす。


 俺とマリスは、静かに左右に距離を取っていく。

 攻撃を仕掛ければ、次の瞬間にどちらが死ぬかもしれない。


 なら、初撃はおそろしいほど重要だ。


 だがそのとき、俺は驚くべきものをみた。


 静と動、ミルク先生は突然に消えて、目の前に現れた。


 例えるならそれは、それでしか形容できなかった。


 距離を詰められたという認識はない。

 

 ――瞬間移動。


 その言葉が浮かんだのは、不可侵領域バリアが粉々に砕け散った塊を視認したときだった。


 ――――――――――

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