344 孤高の最強②(ヴァイス)

 魔力を燃やす――これは、従来の魔力原理を無視している。

 前世の言葉を借りるなら、ミルク先生は魔力をガソリンだと認識しているのだろう。

 あえて燃やすことで、爆発的な火力を生み出す。


 異世界の戦いは短期決戦が多い。それこそ、半日も戦うなんてこともほとんどない。

 魔物は人間と違ってスタミナという概念が薄く、どれだけ弱い個体でも体力が無尽蔵だ。それで編み出したのだろう。


 それこそが、ミルク先生の奥義だ。


 なので、先生には必殺技と思われる剣技など存在しない。

 もちろん魔法や特殊な攻撃はあるが、それはあくまでも技術だ。


 だがこれはある意味でおそろしい。

 体力、気力、精神力、魔力、剣技、体術、すべてがS級にもかかわらず、それを爆発的に燃やし、限界という壁をぶち破ってくる。


 これがもし試験でなければ、俺はたった一人で戦っただろう。


 しかし今は違う。


 エゴは終わりだ。

 ここからは、勝つ為にやる。


「マリ――」

「はっ! 我が主様、何なりとご命令をくださいませ。――ハァハァ」


 すぐ後ろで待機していたデビことマリスに声を掛けようとすると、すぐさま隣にやってきて膝をついた。

 ……ルナといいこいつといい、最近なんか変態な奴が多いな。


 まあいい。


「ここからは二人で攻撃を仕掛ける。――わかってるな?」

「もちろんでございます。私は不死身の身体を持つ配下。何なりと犠牲にしてくださいませ」


 マリスの強みは、死を恐れないところだ。

 体躯がデカくなった(特にたゆんたゆん)せいで復活に時間はかかるが、その分、耐久力も上がっている。

 前みたいに一撃でやられるなんてことはないだろう。


 ミルク先生は、静かに立っていた。

 先手を重んじる先生が、なぜ動かないのか。


 いや、動けないのか。


 それは、祠の防御術式が全て取り払われたからだ。


 ココが落ちた後、クロエも落ちた。


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