346 孤高の最強④(ヴァイス)

「マリス!」


 俺は、腹の底から叫んだ。

 彼女とは常に一緒にいた。この言葉の意味は、すぐに理解しただろう。


 マリスは祠に向かって一直線に突っ込んでいく。


 何が何でも破壊する。その意図が伝わったのだ。


「潔いな、ヴァイス」


 今まで何度も驚いたことはあるが、今日ほど震えたことはない。

 だが、それに打ちひしがれるほど軟な鍛え方はしていない。


 俺は、すぐに攻撃を放った。


 竜と戦った気持ちを彷彿させるほど、渾身の一撃を放つ。


 魔眼は、あくまでも魔力の流れで予測しているものだ。

 しかし、攻撃の予測が確認できたのは、ガラス魂が響いた後だった。


 つまり、俺がもっと集中しなければ能力は無効化されたも同然。


 ならば、あの手この手を考えている暇なんてないッッッ!!!!


 右斜め上からの渾身の振り下ろし。

 エレノアの腐食を付与した剣。

 防御シールドでは確実に防げない。


 だが――。


「攻撃は当たらなければ意味がない。お前にはまだそれを――教えてなかったな」


 しかし、ミルク先生はおそるべき速度で回避した。

 魔力を爆発させたことによる速度。


 いや、それだけじゃない。


 おそらく脳への伝達速度も向上させているのだ。


 でなければこの反射神経は説明が付かない。


 ……そういうことか。ノブレスの開発陣は、すべての事柄に理屈を重んじる。


 ただ強いだけではなく、しっかりと理由を裏付けている。


 俺は、ココの防御に近い魔法を全方向に発動させた。

 魔眼の発動が間に合わずとも、どこからでも攻撃を受け止められる。


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