245 気のせいじゃない

「あら、私の婚約者はとても人気みたいですね」

「ヴァイス様は、恰好いいですから!」


 後ろに立っていたのはシンティアさんとリリスさんだ。

 シンティアさんは、ノブレスの中でも凄くその……大きい。

 そして、私よりも凄く綺麗だ。


 リリスさんは華奢に見えるのに身体が引き締まっていて、足がスラリと長い。

 みんな、なんて綺麗なんだろう。


 って、だ、大丈夫かな?


「そう驚かないでください。彼が褒められるのは素直に嬉しいですよ。それに、ヴァイスが選んだのであれば、私は構いませんよ」


 まさかの一言に、私たちは誰も言葉を発せられ――ない。

 1人以外は――。


「おお! なら伝えてみようか! 気持ちを! いやあ、シンティアは話がわかるのう!」

「とはいえ、もちろん私を倒してからですよ」

「え?」

「その覚悟は、おありですよねえ? トゥーラさん」

「おお!? いいだろう! ならば!」

「ちょ、ちょっと今はダメだよ!?」


 二人が立ち上がって裸のまま決闘しそうになったので、シャリーさんが急いで止めた。

 リリスさんはずっとニコニコしている。


 私は、なんとなく、ちょっと偉そうかもしれないけど、尋ねてみた。


「リ、リリスさんは? ヴァイスくんのこと、どう思ってるの?」

「大好きですよ! もちろん! でも、みんな大好きです! シンティアさんも、カルタさんも、セシルさんも、シャリーさんも! もちろん、ヴァイス様は特別ですけど!」


 その言葉で、みんなが笑顔になる。


「やっぱりリリスさんがいると楽しいね。良かった。本当に」


 シャリーさんの言う通りだ。

 私たちのムード―メーカー、リリスさん。太陽みたいな人。


 ……でも、さっきのシンティアさんの一言、本当なのかな……。


 明日から、もっと鍛えなきゃ……。


「改めて皆さん、ありがとうございました! もう二度と退学届けなんて出さないので、これからもよろしくお願いします!」

「そうね。私からもお願いするわ」

「もちろん。アレンも嬉しそうにしてたしね」

「うむ! 平和が一番だ!」

「ファンセントくんも嬉しそうにしてたよ」


 ああ、またこうやってみんな一緒で嬉しい。


「いいわねえみんな楽しそうで。私も混ぜてもらえるかしら」


 そしてその時、いつの間にか湯に浸かっていたのは――エヴァさんだった。

 みんなの肩がびくっとなるも、ふふふと嬉しそうに笑っている。


 不思議な人だ。

 何を考えているのかわからない。

 でも、根が優しい事はもうわかっている。


「カルタさん」


 すると突然、名指しで名前を呼ばれた。

 え、ええ!? な、なにかした!?


「大きいわねえ。どのくらいあるの? 触っていいかしら。触るわね。ふうん、あ、柔らかいわねえ」

「え、ええ、エヴァさん!?」

「ふうん、いいわねえ。もしかしたら魔力総量と関係してるのかもしれないねえ」

「ふぇ、ふぇええ、た、たすけてええええ!? みんなあああ」


 その日、私は、人生で一番、たゆんたゆんされた。


「トゥーラちゃんも大きいわねえ」

「ぬおお!?」

「シャリーちゃんも」

「え、ええあんっ!?」

「シンティアちゃん、リリスちゃんも」

「ふふふ、いやらしいですわ」

「ひぁあっ」

「セシルちゃんは、ほどよくていいわね」

「あんっ……エヴァさんっ……」


 ちなみにみんな揉まれた。




「ブラの……サイズが合わない……」


 翌日、ちょっとおっきくなってたけど、たぶん……無関係だと思う。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る